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レポート
製薬会社別・疾患領域別に捉える製薬市場の動向
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レポート
グローバル製薬業界の特性と評価のポイント
個別発行体評価
オラクルの概要と投資評価ポイント
本動画では、Oracle.corp(オラクル)のFY2025 Q1(2024/8月期)までの決算をもとに、オラクルの経営状況や主要商品市場の現状を確認し、同社に対するクレジット評価を行う。
[オラクルの事業概要]
- オラクルは、データベースを中核に統合的なソフトウェア・サービスを提供。主に4事業分野からなる。
- 総売上高の7割強をコア事業であるクラウドサービス&ライセンスサポートが占めている。同事業は、オラクルの成長ドライバーである (年10%程度の成長を継続)。
半面で、他の3事業の売上高は、漸減傾向にある。
[クラウドサービス市場の構造]
- クラウドサービスは、大きく(i)SaaS(最も高付加価値で市場規模も大きい;アプリを含む)、(ii) PaaS(中位;プラットフォーム提供)、(iii) IaaS(最も基本的;インフラのみ)の3種に大別できる。
- 世界のクラウドサービス市場は急成長を継続している。最も高付加価値分野のSaaS-アプリが最も高い売上高を誇り、オラクルも同セグメントの売上高が最も高く市場シェア4位に位置する。
- SaaSは、各社が異なる付加価値で差別化を図っており、中長期での独自の強みを維持しやすい。IaaSのような低付加価値サービスは、スケールメリットによる価格競争力以外での差別化が相対的に困難。
[オラクルの業績・財務状況]
- 直近四半期(FY2025Q1)における売上高は、最も売上高構成比の高いクラウドサービス&ライセンスサポートへの新規顧客の流入によって、売上高が増大、前年比+6%強の増収。
- 営業利益・純利益の増益率は、+17.3%・+23.1%、また直近のQ1においてもそれぞれ +21.1%・+21.0%と十分な増益率を示していた。
- オラクルでは現在、事業の再編と効率化(売上原価率の改善)を図る2024年リストラクチャリング・プランを進行中。増収・増益によって十分な利益水準が保たれている状態での事業再編のため、特段に不安視する必要はない。
[オラクルの財務状況]
- FY2023のサーナー買収の影響で大幅に負債が増え、債務超過に陥っていたが、FY2023Q3に有利子負債圧縮を行い、債務超過を解消。Q1には7.8%まで急回復。
- 負債返済能力も同時に高めており、ネット有利子負債/EBITDA倍率が3.45倍まで低下(改善)した。
- 直近3四半期で営業CFの増加を裏付けとして投資規模を維持しつつも高水準のフリーCFを確保、同時に財務CFにおける返済超過が継続されている傾向から、オラクルの債務返済能力は向上、財務健全性も高まっている。
[オラクルの信用格付、及び社債、株式の投資評価]
- Moody’sからはBaa2格、S&PからはBBB格、FitchからもBBB格とされている。
- 高い売上高、CFの改善、業界の成長性を鑑みて、今後2-5年以内に格付けにポジティブな影響が顕在化する可能性も。
- グローバルなブロック経済化が進む中で、米国内の情報保全の重要性も高まっており、オラクルの米国市場における競争力は維持されやすいと考えられる。
- 利回りとスプレッドの期間構造から、2040年頃の満期(残存13~17年)のオラクル社債が、相対的に良好な投資機会を提供。
個別発行体評価
バイオジェン(MDY:Baa2、S&P:BBB+) 事業概要と同社のクレジット投資評価
- バイオジェンはアメリカの医薬品メーカー。FY2023年の総売上は98.3億米ドルで、製薬会社別売上高で売上高20位内には位置していない、独自の専門性を有するバイオ薬メーカー。
- FY2023の総売上の5割弱を「多発性硬化症(中核神経疾病)」の治療薬が占める一方、各2割弱を希少疾患が占める事業構成。
- 主力製品のうち、TysabriやSPINRAZA等の売上高上位の医薬品については、特許権失効は2034-2035年と、まだ十分な時間が残されている。一方で、Tecfideraは特許切れが迫っており、2025年にはヨーロッパでの独占的販売権を失う予定。既にバイオシミラーによる市場シェアの浸食を受けており、今後も引き続き減収が見込まれる。
- バイオジェンの創薬パイプラインの総保有件数は21件と、より上位に位置する製薬企業と比較して案件の保有件数は少ない。ただし、創薬パイプラインの数は、おおむね製薬会社の売上規模に比例することを考えれば、バイオジェンのパイプラインは、必ずしも不充分なものではないと弊社では判断している。
- 過去2年間でも二件のM&Aが完了。従来から同社が得意とする中枢神経領域の地盤を固める一方でより競合製品の少ないニッチな医薬品をM&Aにより早期拡大するという、同社の経営戦略を反映。
- インフレ対策法の下での薬価交渉制度には、バイオジェンの製品は指定されにくく、同種のリスクは他社より小さい。
- バイオジェンは中核神経領域において最も高い占有率を維持。ただし、主要製品である3製品のFY2023における合計占有率は未だ40%程度を維持するも、過去5年間ではTecfideraの著しい減収により領域内シェアが大きく落ち込む(70%強→ 40%強)。
- 財務構造は、他の製薬会社に比べても頑健。
- 2024年は減収が継続の見込み。ただし、営業利益率はM&A実施直後と比べ大幅に回復。
- バイオジェンの5年債などには充分な投資の効用が存在。20年超の債券も2~3年の保有後に入れ替えを考える場合には効用がある。反面、満期保有を前提とした場合には、超長期にわたり差別化されたビジネスモデルを維持できるかどうかは、不安定性が存在、他銘柄に劣る可能性。
個別発行体評価
アムジェン(MDY:Baa1、S&P:BBB+、Fitch:BBB) 事業概要と同社のクレジット投資評価
- アムジェンはアメリカのバイオ医薬品メーカー。FY2023年の総売上は約282億米ドルで、グローバル製薬会社の中で売上高では10位前後。
- FY2023の総売上は、3割前後を「一般医薬品(主に骨粗鬆症,心臓病関連)」、「がん腫瘍」がそれぞれ占め、2.5割を「炎症」が占める事業構成。
- FQ2 2024 では前年度同期比で+20.1%の増収、売上高は8,388(百万米ドル)。M&Aで取得した医薬品が増収に大きく貢献。
- 主要医薬品の多くは2030年までに期限が切れる見込み → 一方で、創薬ポートフォリオの拡充目的で実施したM&Aにより創薬パイプラインにはフェーズⅢが多い。
過去2年間でも二件のM&Aが完了。高額な買収費用を拠出することによってパイプラインだけでなく、既に商品化された製品の取得にも積極的に取り組んでいる。
- インフレ対策法の下での薬価交渉制度には、アムジェンの製品からは免疫疾患領域を適応症とするEnbrelが指定されている。
- 同社のブロックバスターとその特許期限を意識すれば、今後も創薬ポートフォリオの安定化のためにM&Aは継続されやすいとみる。この結果、ただでさえ同業他社比で劣る財務比率はさらに低下する可能性がある。
- 脆弱な財務構造に対し、市場のスプレッドはタイトに評価。
- 単体でみた場合の投資に問題はないが、同業他社比でみれば割高なプライシングがされており、より効率的な製薬社債の投資機会が別に存在しうる、と評価している。
個別発行体評価
ギリアド・サイエンシズ(MDY:A3、S&P:BBB+) 事業概要と同社のクレジット投資評価
- ギリアドサイエンシズは、アメリカの製薬メーカー。FY2023年の総売上高は271億米ドルで、グローバル製薬会社の中では売上高で15位前後の規模。
- ギリアドは、HIV(AIDS)を含む感染症、がん腫瘍、肝臓病などの疾患領域に強み。特にHIV関連が総売上の7割弱を占めている(HIV薬は、大衆薬とは異なり中長期にわたり安定した収益構造を維持しやすい) 。同社製品で最も高い売上高を獲得したHIV対処薬のはBiktarvyで、FY2023総売上高の44%を占める。特許期限がFY2036まで有効であることから競合品の台頭による収益低下のリスクも小さい。
- ギリアドが提供するHIV対処薬は、治療薬ではない点に注目。HIVは発症時の致死率が高く、投薬が継続される可能性が高い。欧米で患者数が増え続ける中、持続的な売上が維持されやすい。
- ギリアドでは、肝疾患領域でのシェア拡大を目的として、シーマベイ社の買収を完了。Covid対処薬に代わる売上成長と事業分散の強化に向けた施策。
- 同社は薬価交渉制度による薬価引き下げのリスクは小さく、他の米系製薬メーカーと比べても、相対的に頑健なビジネスモデルが維持されやすいと考える。
- 同社では強力な資金創出能力により、M&Aに伴う財務の一時的な劣化をカバーし、健全性を維持している。また、同社は発行体としての相対的に高い信用力評価(MDY:A3、S&P:BBB+)を受けている。S&Pは、財務面では既にA-レベルにあり、収益強化で格上げ可能性とコメント。
- 同社の社債は、製薬業界の中でも独自の頑健なビジネスモデルを維持しやすく、20年超等の債券の長期安定保有にも向くと評価。
個別発行体評価
明治安田生命の概要と投資評価ポイント
[明治安田生命グループの概要]
- 明治安田生命は2024年3月期における連結年間保険料収入が3.3兆円、連結総資産が52.9兆円の巨大企業。
- 年換算保険料(2023年度)の大きさでは4大民間生命の第3位に位置する。
- 2024年9月に新発でドル建てのハイブリッド劣後債を起債したため、当面は流動性が高まりやすい。
[明治安田生命の連結ベースの経営状況と、国内外の事業状況]
- 2023年度の連結保険料(再保険を除く)は3.33兆円、前年比-9.0%の減収、海外事業の保険料は15%を占め前年比+10.6%の増収
- 2023年度における連結基礎利益は5,610億円となり前年比+39.6%の大幅増益
- 明治安田生命連結での当期純余剰(利益)は1,535億円(前年比+78.8%)の大幅な増益
[明治安田生命(相互会社単体)の経営状況]
①. 明治安田生命の保険事業の状況
- FY2023における単体保険料は2兆8,172億円、前年同期比で-11.8%減収。
- 単体基礎利益は4,989 億円となり、前年比で+34.3%の増益。
②. 明治安田生命の資産運用の状況
- 一般勘定運用資産残高は約46.8兆円とFY2022Q2以降増加継続。
- 2023年度の有価証券運用利回りは3.56%と極めて好調。資産別の運用利回りは、外国株式と不動産を除き上昇。ただし外国株式も依然として高水準。
③. 明治安田生命の経常利益の状況
- 明治安田生命の経常利益は2,310億円、前年比で-18.4%の減益。
- 臨時費用の拡大とキャピタル損益の赤字が寄与。
[明治安田生命の連結/単体のソルベンシー・マージン比率、ESRの状況]
- 金融監督指標である国内ソルベンシー・マージン比率は、グループ連結ベースで1033% 、明治安田生命単体ベースで996% と極めて安定した水準を維持(4社中1位)
- 2025年4月以降に適用される新たな監督指標であるESRでは、2024年3月末時点で220%との数値を開示。いずれの指標からも、明治安田生命はきわめて健全な財務体質を有する保険会社と評価。
個別発行体評価
日本生命の概要と投資評価ポイント
日本生命への債券投資を検討するにあたって、企業の概要から投資評価ポイントについて簡潔に解説する。
[日本生命の概要]
- 日本生命は、国内の民間4大生命(日本、第一、明治安田、住友)の1社であり、長年にわたり業界首位の保有契約高を誇る相互会社。
- グループ連結での年間保険料収入は約8.6兆円と、大手4社のうちの同業他社比で突出した高い水準。
[日本生命(連結)の経営状況と国内外の事業状況]
- 日本生命の連結保険料等収入は増収傾向。増分の多くは銀行販売チャネル(前年比+64.7%)と、営業職員チャネル(前年比+21%)に起因。
2023年度における連結基礎利益は7,640億円と前年比+59.4%と大幅な増益。 日本生命連結での当期純余剰(利益)も4,124億円(前年比+190.2%)と大幅増益。
[日本生命(相互会社単体)の経営状況]
①. 日本生命の保険事業の状況
- 2023年度における日本生命単体の保険料等収入は52,974億円(前年比+14%)と増収。基礎利益は7,087億円(前年比+42.1%)と増益。危険差益(死差益)が2,808億円(前年比+19.8%)、利差益が3,733億円(前年比+70.4%)の増益が寄与。他の国内四大生保より、国内事業が相対的に好調。
②. 日本生命の資産運用の状況
- 2023年度末における日本生命の一般勘定運用資産残高は約82兆円とFY2022Q2以降増加継続。
- 日本生命の運用資産は様々なセクターに分散しているが、四大民間生命の中では、国内外の株式への投資比率が相対的に高いことが特徴の一つ。
- 2023年度末の運用利回りは2.00%まで低下(前年は2.08%)。資産別の運用利回りは、国内株の運用利回りが最も高い。
③. 日本生命の経常利益の状況
- 2023年度の日本生命の経常利益は5,813億円、前年同期比+308.5%の増益。
- 内訳に基礎利益の増益、臨時費用の縮小が寄与。
[日本生命の連結/単体のソルベンシー・マージン比率、ESRの状況]
- 金融監督指標である国内ソルベンシー・マージン比率は、連結で1023%、単体で980%と極めて安定した水準を維持。民間大手生保4社の中で最も高い水準。
- 2025年4月以降に適用される新たな監督指標であるESRでは、2023年度の決算時に初めて224% (2023年3月末時点)。この数値も同業他社の中でも最も高い水準。
- 長らく安定性についても業界首位であったが、近年では明治安田生命に逆転されている。
投資戦略動画
国内生保劣後債へのクレジット投資の考え方
[国内生保発行の劣後債投資における制度上の理解の重要性]
- 金融機関は社会への影響力が強い為、特別な法的支援の枠組み(セーフティ・ネットワーク)が設けられている。
- 保険会社は2025年度からICSへと監督制度が変更される。
[ 保険会社特有の会計・法人形態の理解]
- 生命保険会社には相互会社と株式会社の二種類が存在。 - 債券投資家から見た会社形態別の最も大きな違いは適時開示義務の有無。
[金融システムへの影響からみた保険会社への公的支援可能性]
- 保険事業は経営上金融システムに影響を及ぼすような事業形態ではないため、日本の大手生命保険会社は国際基準行に相当。
- ただし「グローバルにシステム上重要な保険会社(G-SII)」に指定された欧米大手金融機関は、非保険事業が多いことが指定要因。
国内保険会社はむしろ安定した事業を行っているためにG-SIIに非該当と言える。
- 2013年の預金保険法改正により、保険会社にも預金保険法第126条に基づく公的支援が制度的に可能に。
ただし、同制度は流動性供給と資産買取りが主体。
- 金融システムへの悪影響が強くない限り、公的資金による資本注入などの支援は実施されにくい。
対象となりやすいD-SIBs(国内の金融システム上、重要な金融機関)には、国内保険会社は指定されていない。
- 生命保険会社の破綻の際は、契約のみ譲渡しその後解散するケース、もしくは更生特例法を適応させ経営破綻に
至るケースがほとんどとなっていた。
[国内生保が発行する劣後債投資と、公的支援への考え方]
- 保険ハイブリッド劣後債は、銀行のB3T2債に近い、負債と資本の性格を併せ持つ債券となっている。
- 銀行劣後債との違い;
国内基準に基づくソルベンシー・マージン比率と、
2025年以降に適用される経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR、公表済み)
- 「大きすぎてつぶせない(TBTF)」という議論は、保険会社には適用されない。
- 保険会社の劣後債投資では、信用格付けと監督指標のモニタリングが重要。
加えて、2024年度中は以下の2指標のモニタリングが重要。
国内基準に基づくソルベンシー・マージン比率と、
2025年以降に適用される経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR、公表済み)
[まとめ]
- 国内の大手生命保険会社は、高い信用格付けを有する社債の発行体
- 経営危機時の公的支援可能性は銀行に劣る一方で、銀行のように短期間で資金が流出して経営危機になる可能性が低いため、D-SIBsの指定は受けていない点は、投資評価上のプラス材料として考慮すべき。
- 新規制対応は、日本生命、明治安田生命などでは、順調に進んでいる。
- 日本の生保が発行しているハイブリッド劣後債は、銀行のTier2債に相当。破綻認定なしにベイルインが生ずるリスクはない制度設計。
銀行のAT1債(永久劣後債)より商品設計上、低リスクの可能性。
- 以上の観点から、日本生命、明治安田生命の米ドル建てハイブリッド劣後債には、安定保有を前提とした投資価値があると評価。
個別発行体評価
アッヴィ(MDY:A3、S&P:A-)事業概要と同社のクレジット投資評価
[アッヴィの事業概要]
- アッヴィ(AbbVie Inc.)は免疫疾患、神経科学などの疾患領域に強みをもつ米国の医薬品メーカー
- FY2023年の総売上は543億米ドルで、製薬会社別売上高は4位
- 免疫系医薬品が総売上の約半分(48%)を占める一方で、がん腫瘍、美容系、神経科学系医薬品がそれぞれ各1割前後を占める構成
[アッヴィ製品の特許期限と創薬パイプライン]
- 最大のブロックバスターであったHumiraの特許はFY2023初頭に切れており、今後、2024年の終わりまでにRinvoqも特許切れを迎える予定。
2製品の売上占有率(FY2023)は34%。ただし、同社の創薬パイプラインのフェーズⅢにはRinvoqに関する特許が5件含まれており、Rinvoqの特許期間は実効的に延長される可能性も。
- アッヴィの総保有件数は他企業と比較して多くはないものの、各フェーズに対して20件以上と均等に配分。
- イミュノジェン社(がん腫瘍領域)、セレベル社(精神疾患や神経疾患)の買収により疾患領域を拡大。ただし、M&Aは財務を圧迫。
[決算動向]
- FQ2 2024 における全社ベースの売上高は前年度同期より+597(百万米ドル)伸長し14, 462(百万米ドル)に。
- 特許失効によるHumiraの減収を、Skyrizi、Rinvoqなどの製品の販売増で相殺。
- 結果、営業利益水準も安定維持。
[アッヴィ社債の投資評価]
アナリスト
製薬
アムジェン(MDY:Baa1、S&P:BBB+、Fitch:BBB)の事業概要と同社のクレジット投資評価
本レポートでは、アムジェン(Amgen Inc.)の、FY2024 Q2までの決算を元に、経営状況や主要商品市場の現状を確認し、同社に対するクレジット評価を行う。
〇 アムジェンの事業概要 p. 2
①アムジェンの事業概要
②製薬業界におけるアムジェンのビジネスモデルの特性
③アムジェンの主要疾患領域別の事業状況
〇 アムジェンの業績状況 p. 16
- 四半期決算の売上は前年度同期比で大幅な増収。Tepezza、Krystexxa(M&Aで取得した医薬品、希少疾患)などによる収益力改善が主な要因。
〇 アムジェンの財務状況 p. 18
- 自己資本比率はFY2023 Q3以降、M&A費用の計上に伴い、FY2024 Q1には5.4%まで落ち込んだものの、FY2024 Q2には負債の圧縮が進み6.5%となった。
〇 アムジェンの信用格付、及び社債の投資評価 p. 21
投資戦略動画
製薬会社の事業モデルを理解する
この動画では、各製薬会社における主要疾患領域別売り上げ構成比、それぞれの疾患領域別の各社の商品別占有率を確認し、各企業の相対優位性に関する弊社の考え方を示す。
[製薬業界を疾患領域別市場で理解することの重要性]
‐ 製薬会社別市場:製薬業界で一定のプレゼンスを保つ製薬会社の近年の動向を確認することで、市場全体の動きや外部環境からの影響を確認することができる。
‐ 疾患領域別市場:医薬品はそれぞれ適応する疾患領域が異なるため、同水準の売上高が競合関係を示すとは限らない。疾患領域別に捉えることで、実際の競合関係の把握や正確なセグメント内における優位性の可視化が可能となる。
[製薬業界の制度面からの課題]
- 特許権:保護期間を保証する特許権が切れると、競合品が市場に台頭し従来の売上高がリスクに晒される。
- 薬価交渉制度:「メディケア」において支出額の大きい新薬から対象薬を選定し、公定薬価を設ける制度。特許権の保護期間に強制的に薬価を引き下げる制度。
- 製薬会社毎のブロックバスターの売上高の推移、将来性と安定性を確認。
[疾患領域別市場で見る製薬会社のプレゼンス]
- 疾患領域別市場の市場規模の推移や将来性と安定性について確認
- また、各市場で優位性を保っている企業についても確認。
[企業別の創薬モデルの分析例]
ファイザー、アッヴィ、ジョンソンエンドジョンソン、イーライリリー、ブリストルマーヤーズスクイブの5社を取り上げた。
アナリスト
一般消費財
アンハイザー・ブッシュ・インベブ(MDY:A3、S&P:A-)の事業概要と同社のクレジット投資評価
本レポートでは、Anheuser-Busch InBev N.V. (ABインベブ)の、FY2023の通期決算(ABインベブは12月末決算)を元に、ABインベブの経営状況や主要商品市場の現状を確認し、同社に対するクレジット評価を行う。
◎ ABインベブの事業概要
◎ 世界のビール市場とABインベブの市場シェアの状況
◎ ABインベブの業績状況
◎ ABインベブの財務状況
◎ ABインベブの信用格付、及び社債の投資評価
アナリスト
製薬
バイオジェン(MDY:Baa2、S&P:BBB+)の事業概要と同社のクレジット投資評価
本レポートでは、バイオジェン(Biogen Inc.)の、FY2024 Q1までの決算を元に、経営状況や主要商品市場の現状を確認し、同社に対するクレジット評価を行う。
◎ バイオジェンの事業概要 p. 2
i. バイオジェンの事業概要
- FY2023におけるセグメント別売上はおよそ半分を「多発性硬化症」、2割を「希少疾患」、「抗CD20治療」、1割を「バイオシミラー」が占める構成。
- FY2023は多発性硬化治療薬の売上が著しく落ち込んだ。主要治療薬であるTecfideraはバイオシミラー医薬品との競争により売上高は対前年度比で▲29.9%の大幅減収となった。
ii. 製薬業界におけるバイオジェンのビジネスモデルの特性
- バイオジェンは中核神経領域内でも、さらに細胞制御や脊髄性萎縮症という限られた領域で優位性を獲得。
iii. バイオジェンの主要疾患領域別の事業状況
◎ バイオジェンの業績状況 p. 14
- 四半期決算の売上は前年度同期比で減収。その他の項目における大幅な減収に加えて、多発性硬化症とバイオシミラーにおける減収が重なった結果によるもの。
- FY2023の営業損益は前年度から▲53.7%減益の1,612(百万米ドル)。新薬や独自の疾患領域を展開する医薬品の売上が好調であった一方で、多発性硬化症医薬品の減収とM&Aによる買収の影響が目立つ。
◎ バイオジェンの財務状況 p. 16
- 自己資本比率はFY2023 Q2まで順調な右肩上がり。FY2023 Q3 にM&Aの実施に伴い、一時的に落ち込んだもののFY2024 Q1には元の水準の57%台(FY2023 Q2)まで回復。
- 2024年7月に完了した買収の影響により、再び財政状況の悪化が進むと予測。前回のM&Aですでに多くの「現金・現金同等物及びSTI」を切り崩してしまった点を考慮すると、短期的には起債の可能性。中期的には安定した財務運営を優先か。
◎ バイオジェンの信用格付、及び社債の投資評価 p. 19
アナリスト
製薬
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(MDY:A2、S&P:A)の事業概要と同社のクレジット投資評価
本レポートでは、ブリストル・マイヤーズ・スクイブ(Bristol-Myers Squibb Co.)(以下「BMS」と表記)の、FY2024Q1までの決算を元に、BMSの経営状況や主要商品市場の現状を確認し、同社に対するクレジット評価を行う。
◎BMSの事業概要 p. 2
i. BMSの事業概要
- FY2023の売上は3割前後をがん腫瘍、免疫疾患、心臓病がそれぞれ占める構成。精神神経疾患(中核神経)領域における収益力強化に注力。
ii. 製薬業界とBMSの状況
- ブロックバスター5つの売上高合計が総売上高の75%以上を占めており、売上上位製品への依存度が高い構造となっている。
iii. BMSの主要疾患領域別の事業状況
- 疾病領域別にBMSの位置づけを確認。
◎ BMSの業績状況 p. 13
- 直近四半期の営業損益は大幅な赤字。主な要因は3件の大型買収に伴う関連費用の発生である。ただし、大型M&Aの影響を取り除いた場合、税前利益の予測に減少傾向がみられる点に注意。
◎ BMSの財務状況 p. 16
- 自己資本比率はFY2023Q4まで30%前半で安定的であった。しかし、大型M&Aの実施により直近四半期(FY2024Q1)では16.7%まで落ち込んだ。
◎ BMSの信用格付、及び社債の投資評価 p. 19
アナリスト
製薬
ギリアド・サイエンシズ(MDY A3/S&P BBB+)の事業概要と投資評価
本レポートでは、Gilead Sciences.Inc (以下、ギリアド・サイエンシズ)の、FY2024 Q1までの決算を元に、ギリアド・サイエシズの経営状況や主要商品市場の現状を確認し、同社に対する投資評価を行う。
◎ ギリアド・サイエンシズの事業概要 p. 2
- 総売上の7割弱をHIV対処薬、各1割前後をがん腫瘍や肝臓病、Vekluryがそれぞれ占めている。
◎ ギリアド・サイエンシズの業績状況 p. 13
- 四半期決算の売上は対直前期比でやや減少。HIV項目における季節性の減収と、COVID-19蔓延の終息によるVekluryの構造的な減収が主な要因。ただし収益構造に大きな変化は見られない。
◎ ギリアド・サイエンシズの財務状況 p. 15
- 自己資本比率はFY2023Q4の36.6%まで上昇傾向を継続していたが、FY2024Q1には大型M&A実施の影響により31.0%まで▲5.6ポイントの低下。
◎ ギリアド・サイエンシズの信用格付、及び社債の投資評価 p. 18
アナリスト
製薬
アッヴィ(MDY:A3、S&P:A-)の事業概要と同社のクレジット投資評価
本レポートでは、AbbVie. Corp (以下、アッヴィ)の、FY2023 Q4までの四半期決算を元に、アッヴィの経営状況や主要商品市場の現状を確認し、同社に対するクレジット評価を行う。
◎ アッヴィの事業概要 p. 2
- アッヴィは、免疫疾患、神経科学、がん腫瘍、美容系、アイケアなどの疾患領域に強みがある医薬品メーカー。
- 主要製薬会社中で売上高4位(FY2023)。
- 総売上のおよそ半分を免疫系医薬品、30%強を神経科学系、がん腫瘍、美容系医薬品が占めている。
◎ アッヴィの業績状況 p.12
- アッヴィのFY2023 Q3-Q4決算:売上高、営業利益は共にFY2023Q3から増収となったものの、対前年比では減収、減益。
◎ アッヴィの財務状況 p.15
- 自己資本比率は前年度同期比で5%ほど減少し7.7%に低下。
- 有利子負債返済の余力指標である「ネット有利子負債/EBTDA倍率」も過去3年間に改善傾向。
◎ アッヴィの信用格付、及び社債の投資評価 p.18
ストラテジー
製薬
製薬会社別・疾患領域別に捉える製薬市場の動向
本レポートでは、各製薬会社の主要疾患領域とそれぞれの疾患領域別の占有率を確認し、企業の優位性に関する弊社の考え方を示す。
◎ 前提
- 製薬会社別市場:製薬業界で一定のプレゼンスを保つ製薬会社の近年の動向を確認することで、市場全体の動きや外部環境からの影響を確認することができる。
- 疾患領域別市場:医薬品はそれぞれ適応する疾患領域が異なるため、同水準の売上高を保っていることが競合関係に直結すると限らない。疾患領域別市場で捉えることで、実際の競合関係の把握や正確なセグメント内における優位性の可視化につながる。
- 特許権:保護期間を保証する特許権が切れると、競合品が市場に台頭し従来の売上高がリスクに晒される。
- 薬価交渉制度:「メディケア」において支出額の大きい新薬から対象薬を選定し、公定薬価を設ける制度。特許権の保護期間に強制的に薬価を引き下げる制度。
- 製薬会社ごとのブロックバスターの売上高の推移や、それぞれの将来性と安定性について確認する。
- 疾患領域別市場の市場規模の推移や将来性と安定性について確認する。また、各市場で優位性を保っている企業についても確認。
◎ 製薬業界を疾患領域別市場で理解することの重要性 p.1
◎ 製薬業界の制度面からの課題 p.2
◎ 製薬会社別で捉える製品別収益動向 p.5
◎ 疾患領域別市場で見る製薬会社のプレゼンス p.11
◎ まとめ p.19
ストラテジー
製薬
グローバル製薬業界の特性と評価のポイント
本レポートでは、主要製薬会社の財務情報やFDA開示情報などを元に、製薬業界の現状と開発コストを主とする負荷に関するポイントをまとめ、同業界への投資リスクを理解するためのポイントを確認する。製薬業界には、他業界では見られないような構造上の問題点や環境上の問題点が見られ、そうした業界の特性を踏まえて各企業の投資評価を行う必要がある。そのため、着目点の整理と理解が重要となる。
以下では、最初に投資機会の規模を確認した後、ビジネスモデルの理解に必要な下記の各項目について、順に確認する。
-製薬業界における新製品の開発(創薬)の現状(p.4)
-創薬コスト(研究開発費)の高騰 (p.7)
-特許権の期限から捉える製薬業界の変容 (p.10)
-インフレ抑制法(IRA)成立による収益機会への影響(p.13)
-製品化後の製薬市場の差別化要因と構造的リスク要因(p.16)