動画
Movie
Movie
米ドル建て債券市場動向 2024年12月-第1週
[米ドル建て債券相場動向]
- 米国債の長期利回りはさらに低下、10年債利回りは12/6の引けで4.15%に、20年債も4.42%まで低下した。12月に流動性が維持されやすいのは12/13の週までであり、年内の目安は今週中に確定か。
- 社債スプレッドは、低格付け債でわずかなタイト化が見られたが、投資適格債はほぼ不変。国債金利の変動に連動した値動きにとどまっていた。
[相場の見方]
- 足元で、2週続けて金利は反落(債券価格は上昇)。ただし、年末で市場の流動性はしばらく低下。ここからの短期的な値動きには、一喜一憂する必要性が低下。
- トランプラリーの下では株式相場と債券相場に逆相関が観測されていたが、足元では再度資金需給相場に戻ったように両者の相関が増している。2025年1月以降に新規の投資資金が流入すれば、一旦はさらに相関が増しやすい。
- 社債スプレッドの水準が極端に低下する中で、結果として低格付け企業の起債が容易に。短期的には、低格付け債を含め米国事業債のデフォルト・リスクが需給要因から抑制されやすい。短期の低格付け債には投資機会も。
[新発社債の状況]
- 前週の米ドル建て新発債市場では、起債総額30億ドル以上の巨大案件は2件に留まり、いずれも事業債。一方、銀行による年次決算に向けたTLAC債調達は、その前の週にピークアウトしていたが、米銀大手ではウェルズ・ファーゴとシティグループが新規起債を行っていた。
- 石油大手のコノコフィリップスは、マラソン・オイルを買収した際の40億ドルの債務の借り換えを目的に、総額52億ドルの5本のシニア債起債を実施した。差額はさらなるM&Aなどにも充当可能。
[米ドル建て社債取引動向]
- 最も債券の取引額が多かった金融機関は「JPモルガンチェース」で、「モルガンスタンレー」がそれに続く形。前週に、JPM、今週にCITI、WFC等の新規起債が実施されたが、年度末ということもあり流通市場での取引金額はあまり伸びなかった。
- 事業会社のうち、投資適格債券の取引額では、「CVSヘルス」が最も多く、「タペストリー」、「インテル」がそれに続く形。CVSヘルスは、特定の2025年債とクーポンの高い複数の長期債を公開買付けするテンダーオファーを提案、12月2日から総額20億ドルの範囲内で買入を実施する方針を示しており、これが取引額の増額につながった。
[個別社債価格の動向]
- 米国籍事業法人の投資適格債で、最も上昇したのは小売(一般消費財)セクターでホームセンターを営むロウズの社債。ロウズのFY2024Q3決算では、総売上高が前年比-12.8%、既存店売上は同-7.4%減。DIYブームの後退でプロ向けビジネスの小さいロウズの業績は悪化、プロ向けが半分を占めるホーム・デポと明暗が分かれたが、前週は売り込まれていた社債に買戻しが入った。
- 米国籍の投資適格事業債で最も下落したのが、ハードウエアセクターのウエスタンデジタル。この他、インテル社債で多くの下落が見られた。インテルでは、これまでの再建計画を率いてきたゲルシンガーCEOが12月1日付けで退職、当面は、2人の暫定的な共同最高経営責任者(CEO)が経営を引き継ぎますが、今後の経営方針などの見通しが立ちにくいことなどが嫌気され、債券価格が下落した。
- 外国籍事業法人の投資適格債で最も上昇したのは、石油:総合セクターのメキシコ石油公社(ペメックス)、投機級債で最も上昇したのは、石油:総合セクターのエコペトロル。
国際的なエネルギー相場が低下トレンドを継続する中、メキシコやコロンビアの総合石油企業のぺメックスやエコペトロルの社債がボラティリティを増している。今回の社債価格の上昇は短期的な動きであり、ファンダメンタル面での抜本的な改善は見えない。
- 外国籍事業法人の投資適格債で下落した銘柄には化学工業債が多かった。サウジアラビアン・オイル系列の資金調達会社であるSABICキャピタルI、農業肥料のニュートリエン等の化学工業系の社債では、コモディティ市場におけるエチレン、ベンゼン等の基礎化学品相場の低迷を受け、社債価格も下落した。