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米ドル建て債券市場動向 2024年9月-第3週
2024年9月6日から9月13日までの週次の米国債券市場動向を確認し、起債市場、流通市場の取引金額、流通市場の価格変化について報告する。
(1)起債市場の傾向
- 起債額の特に大きかった案件は、9月10日に発行した総合銀行セクターの「バークレイズ」の45億ドルの起債。債券の本数は3本、年限は4~11年、優先債調達。
- 2番目は、9月9日に発行したインターネットメディアセクターの「ウーバー・テクノロジーズ」の40億ドルの起債。債券の本数は3本、年限は5~30年、優先債調達。 同社は、クルーズ社との自動運転車のプラットフォーム構築で業務提携に至っており、今後の投資資金需要もあって巨額起債を実施した。
- 3番目は、9月10日に発行した石油:総合セクターの「トタルエネルジー・キャピタル」の30億ドルの起債。債券の本数は3本、年限は10~40年、優先債調達。
(2)流通市場における取引金額
- 2024年8月31から9月6日までに取引額が多かった社債を、金融機関債と、事業会社(投資適格、投機級)に分け、それぞれ示した。
- 最も債券の取引額が多かった金融機関債は、シティグループ債。今週は同社や他の地銀で、クレジット・カード債権等無担保消費者信用の取り扱いが多い企業の社債が積極的に取引された。
- 投資適格債券ではストライキ問題も生じたボーイング債が商われ、これに加え8月にBBB+格ゾーンに格下げされたインテル債も積極的に取引された。投機級債券では、カリフォルニアで電力・ガス供給を行うPG&Eの社債が取引額を増やしていた。
(3)流通市場における価格動向
- ここでは、前週の利回り・スプレッドの時系列推移、セグメント別に比較した個別社債相場の動向を確認する。
- FOMCを控え-50bpsの利下げとの思惑も広がり、米国債金利はさらに低下、特に3~5年ゾーンの金利低下が著しく進展した。この結果、5年~20年にかけての順イールド化も更に進展した。
- 米国市場の社債利回りは、ほぼ米国債の利回り変動に連動し、スプレッドの変動はわずかに留まった。より低格付けのB格だけは、スプレッドが拡大した。
- 米国籍事業法人の投資適格債で、最も上昇したのは娯楽コンテンツセクターのワーナー・ディスカバリー・コミュニケーションズ債。これまで時価が低下してきた同社債は、チャーター・コミュニケーションズとの配給契約を増額して更新し安定収益が期待されることを受け反転上昇した。投機級債で、最も上昇したのは小売(一般消費財)セクターのリバティ・インタラクティブ。
- 投資適格債で最も下落したのが、コーチなどのブランドを有するハンドバッグメーカーのタペストリーは、ライバル企業のカプリを買収合併を目指すが、米国連邦取引委員会(FTC)が差し止め訴訟を起こし、混乱を嫌気した市場で社債価格も下落した。また、投機級では、自動車生産に不安が高まる中、部品メーカーのアメリカン・アクスル&マニュファクチャリングや自動車パーツ小売りのアドバンス・オート・パーツなどの社債価格が下落した。
- 外国籍事業法人の投資適格債で、最も上昇したのはパイプラインセクターのトランスカナダ・パイプラインズ。投機級債で、最も上昇したのは林産物・紙製品製造セクターのマーサー・インターナショナル。
9月に入り65.69$/bblまで低下したWTI価格が反転し71$/bblを回復したことを受け、投資適格・投機級ともにパイプラインや油井を有する総合石油企業の社債価格が上昇した。
- 外国籍の投資適格債で最も下落したのが、金属・鉱業セクターのKRAKATAU POSCO(クラカタウ・ポスコ,インドネシア)。投機級債で、最も下落したのは化学工業セクターのメタネックス。
中国経済の減速の中、アジアの鉄鋼企業であるKrakatau Posco社債は鋼材相場の低迷懸念から下落。また、原油価格が上昇する中、価格転嫁が難しい石油化学系企業の社債も下落した。
- 金融機関の投資適格債で、米銀シチズンズ・ファイナンシャル・グループでは、CFOが非中核債権ポートフォリオの縮小に、損失計上を要する取引はしない考えを表明したことを受け、債券価格が上昇した。
- 一方、最も下落したのが、スペインのサンタンデール・ホールディングスUSA債。
(4) まとめ
- 先週は、FOMC前ということもあり、景気に敏感なセクターの社債がテーマ的に商われた。FOMC後には再度、マクロ的なテーマに沿った取引が進みやすくなるものと思われる。