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ストラテジー
米国債全般
米ドル建て債券市場動向 週次:11月8日まで
[米ドル建て債券相場動向]
- 米国の債券市場では、11月FOMCにおける2回連続の利下げにも関わらず、長期金利は連動せず高止まり。トランプ新政権移行後に生じうるインフレへの警戒感を反映か。
- 社債のスプレッドは、投資適格(IG)、投機級(HY)を含め、全面的にタイト化。景気回復への期待も反映したトランプトレードの余波は社債市場にも。
- トランプトレードに着目する投資家を中心に、市場の一部で同氏着任後のインフレ率や経済成長をより強く想定する投資家が、米ドル建て債券の売りをリード。
- 米大統領には強大な権限が与えられているが、仮に減税や関税の引き上げを行うにしても、タイミング的には、2025年後半における影響となる可能性もある。
- 米ドル建て債券価格のオーバーシュートは、もう少し継続する可能性あり。2024年12月にはクリスマス休暇で市場の流動性も低下しやすく、2025年1月は、神経質な相場ながらも金利上昇(単価下落)方向にすすみやすい。トランプ新大統領着任後の2025年1月末以降に修正が顕在化の可能性。
[新発社債の状況]
- 起債額の特に大きかった案件は、11月8日に発行した損害保険セクターのマーシュ・アンド・マクレナンの72.5億ドルの起債。債券の本数は7本、年限は3~30年、優先債調達。リスク、戦略、人材等の分野でグローバルにプロ向けサービスを提供するマーシュ・アンド・マクレナンは、傘下のマーサー部門が、11月4日付、英国とオランダで約660億ドルの運用資産を持つカルダノ社の買収に合意したことを発表。
- 2番目に起債額が多かったのは、廃棄物環境サービス機器セクターのウエイストマネジメントの52億ドル。全米最大の廃棄物処理事業者のウエイストマネジメント社では、Q3決算で売上高が前年比+7.9%、営業利益が+9.6%の増収増益。米国によるリサイクル率の5割までの引き上げ方針(現状約3割)を受け、さらなる事業投資を計画。
[米ドル建て社債取引動向]
- 流通市場で債券の取引額が多かった金融機関債は、バンクオブアメリカ債で、次いでゴールドマンサックスグループ債。
- 決算に合わせて新規起債のフリーズ期間の直後であったこともあり金融社債の取引は薄く、総取引金額も前週の2/3程度まで減少。
- 事業会社債のうち、投資適格債券で取引が多かったのは、メキシコ石油公社(ぺメックス)が最も多く、CVSヘルス、ボーイングが、それに続いた。4位の化学メーカーのセラニーズでは、 11/6付けで、Moody’sが格下げ方向での格付見直しを開始。欧州や中国での自動車や建設需要の低下により、同社の低い収益率や高い債務レバレッジの改善が困難、との理由による。これを受け、同社社債の取引額が増加。
[個別社債価格の動向]
- 米国籍事業債の投資適格債で、最も上昇したのは娯楽コンテンツセクターのディスカバリー・コミュニケーションズ。ワーナーブラザース・ディスカバリーの11/7公表のQ3決算において、10四半期ぶりに当期純損益が黒字転換(税引前赤字は継続)。同決算を受けグループ企業の社債が値上がり(1,3,4位)。
- 投資適格債で最も下落したのが、化学工業セクターのセラニーズUSホールディングス。前述のMoody’sによるネガティブ・ウォッチ指定を受けた動き。投機級債で最も下落したのは、ケーブルテレビ・衛星放送セクターのディッシュDBS。売上高の継続的な低下を受け、10/1にもS&PによりCCC-からCCに格下げされていた。
- 外国籍事業法人の投資適格債で、最も価格が上昇したのは石油:総合セクターのメキシコ石油公社(ペメックス)。一部議員が、DUCと呼ばれるペメックスの税負担のさらなる軽減策を2025年度予算に盛り込むことを検討と、一部メディアに言及。メキシコ官報ではペメックスの8月分のDUC支払いを11月27日に延期としている。これらを材料にペメックス社債の時価が上昇。
- 外国籍事業法人の投資適格債で最も上昇したのは、石油:総合セクターのメキシコ石油公社(ペメックス)。WTIが、先週に70ドル台を回復したことを受け、中南米などのエネルギー・資源関連発行体の社債価格が上昇した。
半面で、外国籍の投資適格債で最も下落したのが、公益事業セクターのSaudi Electricity Sukuk Program Company。中国やアジアの金属や資源関連の主要企業の社債は、中南米とは逆に価格が下落。