レポート
Report
Report
アナリスト
エネルギー
PEMEX(メキシコ石油公社)の「公営企業」化への影響
【結論】
◎ 業態変更がPEMEXの信用力に与える影響
- PEMEXが事業運営において、公的な目的の優先度を高めることは、必ずしも同社社債の信用力を高めることを意味しない。
- 財源、税制、金融保証など、国家財政との一体性が示されれば、信用力のプラス要因。一方で、国家の支援が不透明なまま、政治的に負担増だけを迫られれば、PEMEX社債の信用力にはマイナス要因。
- 債務保証行為はPEMEXの潜在格上げ要因になると同時に、メキシコ政府の潜在格下げ要因にもなり得る。→ 恒久的な支援を行う枠組みを早急に整備する可能性は低い。
- PEMEXの公的な性格の強化は、10年以下などの相対的に短期の信用力を高めやすいが、20年超の超長期の信用力への影響は不透明。
【主な論点】
◎メキシコ石油公社(以下、PEMEX)について、同国内の法律上で規定される「事業種別」を憲法の条文改正を伴って実施する動きが進んでいる。
本レポートは、同変更に関して足元で生じている状況のアップデートと、信用力に対する影響についての考えを整理することを目的とする。
◎ メキシコの政権交代とPEMEXの業態の推移
- PEMEXでは、過去に右派政権の下で商業的な優先順位を伴う「国営生産企業」に分類変更。現在の左派政権の下で、優先順位を公共サービスの提供に置く「公営企業」への変更案が提示、進行中。
◎ 2024年エネルギー改革と憲法改正の現状
- エネルギー改革に伴う憲法の改正点:
(i) PEMEX、CFEは「国営生産企業」から「公営企業」へ、事業の優先度も公的な役割へ
(ii) 公共電力サービスの継続性とアクセシビリティを保証
(iii) 戦略的分野から民間資本を排除し、国家の安全と主権を保証
◎ 憲法改正に関するこれまでと今後のスケジュール
- 2024年10月9日には下院で承認、2024年10月16日に上院で承認。
- 現在は32の州の議会によって議論中。
◎ フィッチ・レーティングスが示したPEMEXの格付け変更可能性
- PEMEXの業態変更に関する議論を受け、フィッチでは3パターンの格付け変更可能性(すべて格上げ方向)を示す。うち、2つのパターンは、メキシコ政府によるPEMEXへの金融債務保証が前提。
◎ 社債市場の反応
- フィッチの事業種別変更に伴う格上げ可能性が市場で好感され、PEMEXの債券価格は9月中旬から10月中旬にかけて大きく上昇。