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【債券Q&A】ハイブリッド劣後債とは?

【債券Q&A】ハイブリッド劣後債とは?

このシリーズでは、一般的な債券の知識に加え、2023年の市場環境を踏まえた債券投資の考え方をQ&A方式でお伝えしています。主な投資対象の債券として想定しているのは、低金利の円建て債ではなく、相対的に高金利の外貨建て債であり、これらを活用した運用の考え方をお伝えしています。

Q43. なぜ劣後債投資を検討するのか?

2010年代以降、金融法人・事業法人を通じてハイブリッド劣後債(Q44で詳述)の発行が、グローバルに増加しました。発行体から見たメリットは、金融であれば規制資本の強化、事業法人であれば格付けの維持などの目的で起債が可能な点です。一方、投資家にとってのメリットは、より複雑なリスクを取る代わりに、より高い利回りが得られる点にあります。

以下で、米ドル建てのシニア債とハイブリッド劣後債の平均利回り・平均スプレッドを比較しました。ここで示したように、ハイブリッド劣後債の利回り・信用スプレッドは、投資適格債を大きく上回ります。ただし、ここでのハイブリッド債の利回り計算には、初回コール日に償還されることを想定した慣例利回りを使用していますが、発行体の財務状況などによっては、同日にコールされないこともあり得ます。満期一括債では投資時点で最終利回りが確定しますが、ハイブリッド劣後債では最終利回りが確定しない点に、注意が必要です。

Q44. ハイブリッド劣後債とは?

ハイブリッド劣後債とは、一般的に「(ⅰ)契約上の法定満期が非常に長期の債券で、一定期間の経過後に発行会社の判断で任意償還(コール)が可能なコーラブル債であること」、「(ⅱ) 発行体(企業)が、倒産など法的破綻した場合の回収順位が、優先債よりも下位となる契約条件になっていること(劣後特約)」、「(ⅲ)発行体(企業)の判断により、任意に利払いを停止できる契約条件になっていること」という条件を満たしている劣後債を指しており、CoCo債もハイブリッド劣後債に含まれます。

通常、初回のコール日までの期間は5~10年、法定満期は10~60年または永久債(法定満期が定まっていない債券)となっています。なお、法定60年満期で5年後から任意償還可能な社債の場合は「60 NC 5」債、永久債は英語でPERP(Perpetual)と表記される場合があります。上記の条件などにより、金融機関では監督官庁などから、事業会社では信用格付機関から、「規制上の資本」「格付評価上の資本」とみなされます。このように、会計上はあくまで負債であり、資本と負債の両方の性格を持つことから、「ハイブリッド」劣後債と呼ばれます。

同じ劣後債であっても、銀行ハイブリッド劣後債(CoCo債)と事業会社のハイブリッド劣後債では性格が大きく異なったものとなっています。両者の大きな違いとして、CoCo債にはベイルイン規定(Q47で解説)が存在するのに対し、事業ハイブリッド劣後債にはベイルイン規定は存在せず、法的破綻時にのみ元利金の喪失リスクが生じる点が挙げられます。他にも下表のように、CoCo債では、金利が変動する商品は資産として認定されないためにコール後のステップアップが認められないといった点や、万が一の場合の損失吸収のバッファーとしての側面を持たせるために監督庁の許可がない限り借換えや任意償還ができないといった点において、事業会社のハイブリッド劣後債と異なっています。



国内債券のリスクと費用について


外国債券の取引にかかるリスク
債券は、債券の価格が市場の金利水準の変化に対応して変動するため、償還前に換金すると損失が生じるおそれがあります。また、債券を発行する組織(発行体)が債務返済不能状態に陥った場合、元本や利子の支払いが滞ったり、不能となったりすることがあります。

国内債券の取引にかかる費用
国内債券を購入する場合は、購入対価のみお支払いいただきます(手数料相当分が購入対価に含まれます。委託手数料はかかりません)。

外国債券のリスクと費用について

外国債券の取引にかかるリスク
債券は、債券の価格が市場の金利水準の変化に対応して変動するため、償還前に換金すると損失が生じるおそれがあります。また、債券を発行する組織(発行体)が債務返済不能状態に陥った場合、元本や利子の支払いが滞ったり、不能となったりすることがあります。外国債券(外貨建て債券)は為替相場の変動等により円ベースでの損失(為替差損)が生じたり、債券を発行する組織(発行体)が所属する国や地域、取引がおこなわれる通貨を発行している国や地域の政治・経済・社会情勢に大きな影響を受けたりするおそれがあります。

外国債券の取引にかかる費用
外国債券を購入する場合は、購入対価のみお支払いいただきます(手数料相当分が購入対価に含まれます。委託手数料はかかりません)。また、円貨から購入する場合は、債券の発行通貨に為替交換する費用が生じます。この費用は債券の発行通貨によって異なります。

商号等 5バリューアセット株式会社/金融商品仲介業者 近畿財務局長(金仲)第437号



上田祐介

上田祐介

5バリューアセット株式会社 副社長兼インベストメント・ストラテジスト。1991年より大和総研でキャリアを開始。2001年より複数の欧州系・米系大手投資銀行でクレジット関連業務を担当。2010年よりメリルリンチ日本証券の、2017年からは三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ・クレジットストラテジストとして国内外のクレジット市場の調査チームを統括。日経ヴェリタス等の外部顧客評価で実績を上げる。