いろいろな媒体で目にすることが多い、統計データ。物事を理解するのにとても便利ですよね。特にグラフになっていると、一目でわかるので、直感的に理解できて素晴らしいと思います。でもちょっと待ってください。その直感は、本当にあっていますか?
今回は、スマホ市場の統計データを用いて、統計データを読むときに気を付けることを見ていきたいと思います。
世界のスマホ、どのメーカーが人気?
日本でとても人気のiPhoneですが、世界の多くの国ではその他のメーカーのAndroid端末の方がよく使われています。
以下のグラフは、世界のモバイル端末販売台数の推移です。スマホ販売台数は2017年から徐々に減っています(折れ線)。一番下の赤いところがアップルです。アップルもまた販売台数が減少してきました。
今や多くの国で、スマホは生活に欠かせないツールとなっています。それなのに端末の販売台数が年々減っているのは、高額で高機能なスマホを短期間で買い換えるよりも、長く使う人が増えたことが原因です。
ところで販売台数が多いメーカーには、韓国のサムスン、アメリカのアップルに、中国のトランシオンが続いています。皆さんは、トランシオンって聞いたことがありますか?
出所:IDCデータより5バリューアセットで作成
ここで、アップルのスマホ販売台数のシェアを見てみましょう。
日本では3人に2人が持っているiPhoneですが、世界的に見るとサムスンや中国メーカーよりも、小さなシェアに留まり、16%程度となっています。一方で、中国の主要メーカー分を合計するとスマホ市場の販売台数の約半分を占めていることが分かります。
出所:IDCデータより5バリューアセットで作成
どうしてiPhone以外のスマホが人気なの?
世界の人たちは、どうしてiPhone以外のスマホを持つのでしょうか?いくつも理由はありますが、最も大きな理由は価格です。
以下の表は、主要端末メーカーの平均販売単価の推移です。アップルの1台当たり販売単価は2023年3月期で唯一1,000ドル(約15万円)を超えており、他のほとんどのメーカーの2~3倍以上の水準を維持しています。その価格も毎年少しずつ上がり続けています。
15万円以上の端末は、大切に長く使わないわけにはいきませんね。
一方、台数シェアで3位にいたトランシオンはアフリカなど途上国で多くの端末を売っているメーカーです。その平均販売単価は51ドル(約7,500円)と低価格を武器に販売台数を増やしています。
出所:IDCデータより5バリューアセットで作成
アップルのシェアは小さいの?
最初にお見せした台数ベースのグラフでは、アップルの市場シェアは16%程度しかありませんでした。しかし、アメリカの株式全体の中で時価総額がトップ5社に入るアップルは、本当にそんな小さいメーカーなのでしょうか。
そこで、スマホの市場のシェアを販売台数ではなく、販売代金で見てみたのが下のグラフです。こちらで見ると、アップル(赤い部分)のシェアは半分近くを占めています。台数で多く見えたトランシオンはごくわずかなシェアに留まっている様に見えます。
また、アップルの販売代金は過去5年間、増加傾向にあります。
出所:IDCデータより5バリューアセットで作成
売上金額シェアで見ると、アップルのシェアは2023年3月時点でほぼ半分の47.3%です。高付加価値モデルを含み持ち、高い台数シェアを持つライバル企業といえば韓国のサムスンですが、販売代金で見ればアップルの半分に過ぎません。同じく中国メーカーもアップルの半分くらいです。
出所:IDCデータより5バリューアセットで作成
以上、今回はスマホ市場を例に、統計データを見ていきました。
「台数ベース」で見るのと「金額ベース」で見るのでは、まったく違った結果になったと思います。
販売代金で見れば、アップルはむしろ成長し続けており、市場全体の販売代金も台数で見た場合ほど落ち込んではいませんでした。
統計データをどの切り口でみるのかが、大事ということですね。
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