四万六千日の功徳(くどく)
浅草寺の境内を彩るほおずき市の屋台は、浅草の夏の風物詩とも言えます。毎年7月9日と10日に行われているこの両日は、浅草寺では最大の「功徳日」とされている。
そもそも「功徳日」とは、その日に参拝すると、100日、1,000日分の功徳が得られるという特別な日をいいますが、7月9日、10日は、功徳日の中でも最大の46,000日分の功徳があるとされ、『四万六千日』と呼ばれています。
つまり、この日にお参りすれば約126年間(46,000÷365≒126)毎日お参りしたのと同じ功徳が得られるという、非常にコスパの良い参拝日といえます。また言い換えれば、レバレッジ効果の高い参拝日という事になります。
金融の世界では、このレバレッジ効果という言葉はしばしば登場します。「レバレッジ」を直訳すれば、「てこの原理」ということなのですが、意味としては小さな力で大きなものを動かすことが出来る仕組みのことであり、例えば、100万円分の為替取引をしたい場合、通常なら100万円の資金が必要ですが、レバレッジ取引なら4万円程度の資金で100万円分の取引をしたのと同様の経済的効果を得る取引が出来ます。(25倍のレバレッジ取引)
このレバレッジ取引、決して悪いことをしているわけではないのですが、金融の世界では、しばしば悪者にされることがあります。
今ここで、100万円で投資をする場合を考えてみます。
パターンA: 現物株を100万円分購入。
パターンB: 個別株式10倍レバレッジ取引(日々騰落依存型)にて100万円を預託。(便宜上購入ではなく預託とします)。
パターンC: 有馬記念(競馬)の3連単に100万円つぎ込む。
競馬が投資と言えるか否かは別として、
Aの場合、株価の動きを見ながら、場合によっては損切りも出来るし、途中で利食い(勝逃げ)する事も出来、単純かつ明快な投資手法と言えます。
一方、Bの場合は、1,000万円投資したのと同じ投資効果があるものの、例えば翌日10%株価が下落したら、評価損失は100万円となり、更なる預託金を投入するか、その場で強制的に終了するかとなります。(契約形態によって異なります)
また、Cの場合は、いわゆるゼロ・サムではありますが、万馬券ともなれば、1億円以上の儲けとなり、いわゆる夢を買うこととなります。(個人的にはこの考え方嫌いじゃない。でも馬券はMax1万円まで)
これらは、A、B、Cどの投資が良くて、どれが悪いとかいう事ではではなく、そもそも
① その投資資金はどんな性格の資金だったか?
② その投資の内容(仕組み)を理解した上での投資か?
③ その投資の目的(目標リターン)がどこにあったか?
④ その投資の期間はどのくらいを想定していたのか?
競馬はともかくとして、レバレッジ取引については、ちょっと金融知識あり、そこそこ理解度の高い方でも、思わぬトラップに引っかかったりします。
例えばBの場合、100円の株価が、翌日105円になった場合、
騰落率: (105 – 100) ÷ 100 = 5% 5%上昇なので、
価値: 100 万円×(1+ 5% × 10倍)= 150万円
この時点では50万円の評価益(当初100万円→150万円)となります。
その翌日、105円の株価が、100円に戻った場合、
騰落率: (100 – 105) ÷ 105 = -4.76% 4.76%下落なので、
価値: 150 万円×(1+ (-4.76%) × 10倍)= 78.57万円
この時点では21.43万円の評価損(当初100万円→78.57万円)となります。
つまり、元となる株価が元に戻っても、レバレッジ効果により、投資効果はマイナスとなることがあります。
ちなみに、Aの場合はもちろん、株価の変動が、@¥100 → @¥105 →@¥100 となっても、
評価損益はゼロです。
金融の世界では、レバレッジ取引や、オプション取引、スワップ取引等、一般にはかなり分かり難い金融工学を駆使したような商品(取引)が数多くあります。これらは、決して悪者ではなく、時として味方にもなりうるのですが、問題なのは、多くの金融商品(取引)では、表面の見かけは超イケメン(美人さん)に仕上がっているのですが、その本質的な中身の部分が分かり難く、悪魔の様な裏の顔があったり、思わぬ落とし穴が潜んでいたりする場合がある事です。
四万六千日の功徳日の超レバレッジは、種も仕掛けもない神様のストラクチャーですが、金融の世界のレバレッジは、人間の手で作られた種も仕掛けもあるものだという事をお忘れなく!!