ホーム > 債券Q&A > 【債券Q&A】クレジット債投資における分散投資とは?

債券Q&A

【債券Q&A】クレジット債投資における分散投資とは?

【債券Q&A】クレジット債投資における分散投資とは?

このシリーズでは、一般的な債券の知識に加え、2023年の市場環境を踏まえた債券投資の考え方をQ&A方式でお伝えしています。主な投資対象の債券として想定しているのは、低金利の円建て債ではなく、相対的に高金利の外貨建て債であり、これらを活用した運用の考え方をお伝えしています。

なお、本記事でご説明するクレジット債については「Q22. クレジット債とは?」、リスクフリー債については「Q12. 国債とは?」に詳しくご説明しておりますのでご覧ください。

Q31. クレジット債投資における分散投資とは?

信用リスクが存在するクレジット債を運用するにあたって、投資戦略上、基本となるのが分散投資です。仮に同一の発行体の債券だけに投資していた場合、デフォルトが起こった際に大きく元金を失いかねません。また、リスクを抑えるために低リスクの銘柄を買うだけでは利回りが低くなってしまい、わざわざクレジット債に投資する意味がなくなってしまいます。

このため様々なリスクに備えつつ、リスクが許容できる範囲内で高い利回りを実現できるように分散する必要があります。そこで分散投資をする上で重要となるのが分散する指標と分散する際の内訳となります。

まず分散投資する上で何を基準に分散させるのか指標が必要になります。具体的には、業種、地域、年限、格付、債券種別などが挙げられます。例えば、業種や地域を分散させることで、コロナ危機における旅客航空業など業種全体に共通なリスクや、戦争・災害など特定の地域に起こるリスクなどを低減させることができます。また同類の債券であっても年限をずらすことによって価格変動等のリスクに対応できます。

また、単に市場平均にもとづいて分散させるのではなく、市場平均と比較して比率を増加(オーバーウェイト)または低減(アンダーウェイト)することで、利回りの増加やリスクの低減を行うことができます。例として、今後不安定になる見込みのある地域・業種の比重を減らし、今後も安定や成長の見込みがある地域・業種の比重を増やすことでリスクの低減することが期待できます。

また格付、債券種別についても、格付の低い社債や弁済順位の低い永久劣後債などハイリスク・ハイリターンな債券と格付が高い発行体の優先シニア債などローリスク・ローリターンな債券に比率を調整することで自分のリスク許容度にあった投資を行うことができます。

例えば、100銘柄に同額を投資し平均利回りが7%であった場合、仮にデフォルトしたとしてもおおよそ7銘柄までに抑えられれば、元金を減らさずに済みます。そのためある程度の信用リスクを許容してハイリスク・ハイリターンな債券に投資する場合には、一定のデフォルトが起きることを織り込み、それ以上のインカムを継続的に得るような戦略もとることが可能です。また、先に述べた通り、デフォルトした場合の損失率が低い(回収率が高い)債券では、もっと多くのデフォルトでも元金に損失が生じにくくなります。

 

Q32. 劣後債とは?

 債券は発行体への貸付金ですので、もし社債発行企業が破産や会社更生法申請などの法的破綻を起こした場合には、債券の抵当順位によって資金回収の可能性は大きく変わってきます。劣後債とは、法的破綻した際に無担保シニア債等の一般的な債券よりも弁済順位が低い債券のことを指します。


劣後債は、デフォルト時に元本割れの可能性が高くリスクが高くなっている反面、同じ発行体の他の債券と比較してクーポンや利回りが高めに設定されているケースが多く、ハイリスク・ハイリターンな特徴を持っています。なお、実際に企業が破産し、会社更生法申請等の法的破綻手続きを取った場合には、既存の債権者持分はかなりの部分が毀損してしまいます。

また、満期が設定されていない(理論上、発行体が存続する限りクーポンのみ永久に支払われ続け、元金が償還されない)永久債の特徴を合わせた債券を永久劣後債と呼び、こちらはハイリスク・ハイリターンの傾向がさらに強い債券となっています。このため格付機関からはこれらのリスクを鑑みて発行体格付けや無担保優先社債の格付けに比べ低いノッチで評価されます。

Q33. クレジット債投資のメリット・デメリットとは?

クレジット債は、国債等の市場変動リスクに着目し期中の売買により超過収益を得られるリスクフリー債券とは異なり、分散投資によりずっと保有を継続することで超過収益を得られるという、対照的な性格を持っています。以下で、リスクフリー債と比べた場合のクレジット債投資のメリット/デメリットを比較します。

[クレジット債投資のメリット]

(i)  相対的にリスクフリー債への投資に比べ、利回りや期待リターンが高い。

(ii) また、国債に比べ発行体の数も債券の本数も非常に多く、劣後債や担保付債など異なる担保順位の債券も選べるなど、無担保シニア債が大半を占める国債とは異なりさまざまな投資機会を選ぶことができる

(iii) 個別債の分散投資により、投資リスクを平準化できる。

(iv) クレジット債の場合には、市場の期待により価格が定まる株式などに比べ、きちんとした投資評価や分析を行うことで比較的安定したリターンを得やすい。

[クレジット債投資のデメリット]

(i) デフォルトリスクが存在すること
格付けが低い場合などには、発行体レベルでの適切な情報収集や分析を行わないとデフォルトにより元金が損なわれることもある。

(ii) 流動性が低いこと
膨大なクレジット債が発行されているが、個々の債券だけを見れば、発行高や取引高はリスクフリー債に比べ非常に限定されている。また、債券は運用目的で購入する人が多く取引量が少ない上、リスクフリー債と異なり流通量も限られるため、売買したいクレジット債がそもそも市場で取引できない可能性がある。

(iii) 取引コストが相対的に高いこと

リスクフリー債に比べると証券会社などにとっても在庫リスクが大きいため、店頭取引における売買価格の差(取引コスト)が大きい。

(iv) 相対的にマーケットインパクトが高いこと

市場取引の流動性が大きくはないため、わずかな金額が取引されただけでも、市場価格(気配値)が容易に変動する可能性がある。




国内債券のリスクと費用について



外国債券の取引にかかるリスク
債券は、債券の価格が市場の金利水準の変化に対応して変動するため、償還前に換金すると損失が生じるおそれがあります。また、債券を発行する組織(発行体)が債務返済不能状態に陥った場合、元本や利子の支払いが滞ったり、不能となったりすることがあります。

国内債券の取引にかかる費用
国内債券を購入する場合は、購入対価のみお支払いいただきます(手数料相当分が購入対価に含まれます。委託手数料はかかりません)。

外国債券のリスクと費用について

外国債券の取引にかかるリスク
債券は、債券の価格が市場の金利水準の変化に対応して変動するため、償還前に換金すると損失が生じるおそれがあります。また、債券を発行する組織(発行体)が債務返済不能状態に陥った場合、元本や利子の支払いが滞ったり、不能となったりすることがあります。外国債券(外貨建て債券)は為替相場の変動等により円ベースでの損失(為替差損)が生じたり、債券を発行する組織(発行体)が所属する国や地域、取引がおこなわれる通貨を発行している国や地域の政治・経済・社会情勢に大きな影響を受けたりするおそれがあります。

外国債券の取引にかかる費用
外国債券を購入する場合は、購入対価のみお支払いいただきます(手数料相当分が購入対価に含まれます。委託手数料はかかりません)。また、円貨から購入する場合は、債券の発行通貨に為替交換する費用が生じます。この費用は債券の発行通貨によって異なります。

商号等 5バリューアセット株式会社/金融商品仲介業者 近畿財務局長(金仲)第437号



上田祐介

上田祐介

5バリューアセット株式会社 副社長兼インベストメント・ストラテジスト。1991年より大和総研でキャリアを開始。2001年より複数の欧州系・米系大手投資銀行でクレジット関連業務を担当。2010年よりメリルリンチ日本証券の、2017年からは三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ・クレジットストラテジストとして国内外のクレジット市場の調査チームを統括。日経ヴェリタス等の外部顧客評価で実績を上げる。

ご案内

5バリュースクウェアは、5バリューアセット株式会社(5VA)によるコラムを掲載するサイトです。資産運用や資産形成、経済全般などにご興味がある方に向けて情報発信をしております。

5バリューアセット株式会社(5VA)は投資・債券のプロフェッショナルです。
気軽に相談ができる場として、無料個別相談やセミナーを設けておりますので、以下より詳細をご確認ください。
また当ブログに掲載していない、債券投資関連情報の調査レポートや市場ニュースも発信しております。