『大衆の反逆』の理念を活かした経営
以下のコメントは、より顧客に寄り添った存在として日本のIFA(金融商品仲介事業者)を変えたいとの理想の下に、5バリューアセット株式会社を立ち上げた、斉藤彰一の経営理念を述べたものです。
オルテガ『大衆の反逆』の理念を活かした経営
※オルテガについては以下を参照
「高貴さは権利によってではなく、自己への要求と義務によって定義されるものである。」
3月にオルテガをテーマに社員研修を開催した。オルテガの「大衆の反逆」は故西部邁氏が再三紹介しておられた本であり、WM(ウェルスマネジメント)に従事する者には、ぜひ一読をお勧めする。
上記のオルテガの写真と言葉は2つの雑誌(「表現者クライテリオン」、「ひらく」)の表紙見開き部分ページで、数年前から紹介させてもらっている。
わが国のWMは、米国に比べて歴史が浅く、改善すべきところが多々あると感じる。従って、金融関係者が危機意識を持ち、努力をしていかなければ、米国のWMに追いつくのは厳しいと思われる。
金融の規模や商品の多様さ、ITやシステムの差なども劣っているのだが、決定的にどうしようもない部分が、「精神性」の差なのである。
WMは欧州が発祥で、貴族が貴族のために無報酬で行うものであった。貴族同士の強い信頼関係のうえに成立していたのである。その後19世紀に米国にも広がっていって有償となっていったのだが、貴族の精神性は脈々と受け継がれている。米国のFA(ファイナンシャルアドバイザー)は医者や弁護士と同格で社会的地位が高く、一生の仕事としての強い職業観を持ち、裕福で、尊敬され、子は親の姿にあこがれ、親から子、子から孫へ継承することが多い。
対照的にわが国のFAは多くが金融機関所属であり2~3年で転勤するため、顧客との長期的なリレーションを築くことも難しく、一生の仕事として親から子に継承することも容易ではない。
「大衆の反逆」にゲーテの言葉ではあるが、以下のものがある。
「勝手気ままに生きるのは平民で、貴族は定めと掟に憧れる。」
「平民」と「貴族」を以下のように言いかえてみると、あまりに絶妙なものとなる。
「勝手気ままに生きるのは日本FAで、米国FAは定めと掟に憧れる。」
わが社はメリルリンチの5 Principlesを範とする5 Valueを掲げて理想としているが、それはこのような「貴族の精神」をもってWMを行うということと同義であると私は思っている。この21世紀の時代に、貴族の精神性を持つにはどうしたら良いのかと考えている。
WMを高く志す者は、アナリスト資格やCFP資格なども大事であろうが、まずは「大衆の反逆」を読んでほしいと思う。
オルテガについて
『大衆の反逆』(La rebelión de las masas, 1929)が周知の代表作であるホセ・オルテガ・イ・ガゼット(1883-1955)は、スペイン出身の哲学者です。著作は哲学以外にも、文学(「ドン・キホーテをめぐる省察」)、政治・社会(「無脊椎のスペイン」)、芸術(「ベラスケス論」、「ゴヤ論」)、など多岐にわたり、哲学者よりも批評家としての側面が強い印象があります。
国内におけるオルテガ受容は1933年が嚆矢とされます。また、著作の翻訳版が刊行された1953年から受容はさらに拡大し、1956-1975年にはオルテガの分野横断的な著作が注目され始めます。白水社から刊行された邦訳の『オルテガ著作集』も、より広い層がオルテガの思想に触れる契機になったと言われています。
参考: 木下智統「日本における初期オルテガ思想受容の展開と特質」『金城学院大学論集 社会科学編』, 10(1),69-77頁, 2013
『大衆の反逆』の本邦初翻訳は、樺俊夫 訳『大衆の蜂起』(創元社, 1953年)で、国内では保守主義者としてオルテガが受容され、特に大衆社会批判の文脈で西部邁に強い影響を与えたことでもよく知られています。
5バリューアセットについて
5バリューアセットは、証券会社等の委託を受け、有価証券売買等の媒介などを行う金融商品仲介事業者(IFA法人)です。
グローバル債券を中心にした運用のご提案を通じ、国内ではまだ馴染みの薄いアメリカ流のウェルスマネジメントを日本に定着させることを理念に掲げております。
IFAは独立系資産アドバイザー(Independent Financial Advisor)の略称で、証券会社や銀行などの金融機関に属さず、中立・独立の立場からお客様に資産運用のアドバイスを行う専門家です。また、FAはアメリカにおいて、医者や弁護士と並ぶ3大業務として尊敬を集めています。
当社では、FAのみならず社員全員が持つべき理念を見失わないよう定期的な研修・勉強会を開催し、社会の中で求められるべき人物像に対する理解を深め、我々自身のあり方を見つめ直すための不断の努力を行っています。
2023年3月からは新たな試みとして、外部講師をお招きしたオフサイト研修を企画し、他分野の専門地に触れる機会を継続的に設けております。