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おしゃれなカフェの皮算用

おしゃれなカフェの皮算用

(画像出所) スタジオジブリ公式X(旧twitter)よりフリー提供


おしゃれなカフェでのんびりと。

そんなひとときに癒されている方も多いですね。

いつかは、自分だけのおしゃれでこだわりのカフェを出したい。

そんな夢を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、喫茶店・カフェに関する統計データを用いて、おしゃれなカフェの夢と現実を見ていきたいと思います。

カフェ好きなのは、どこの人?

いくらおしゃれなカフェを出そうと思っても、お客さんがいなければ商売になりません。

どこに住んでいる人がカフェ好きなのかを確認してみましょう。

少し古いですが、2014年(平成26年)の総務省統計局のデータに基づき、都道府県別の喫茶店数の多い県と少ない県を比較してみました。

(出所) 総務統計局 喫茶店のいま

人口当たりで喫茶店が多い都道府県は1位の高知県を除けば、ほとんどが中部・近畿にあります。一方、喫茶店が少ない都道府県は北関東や東北が多いようです。なお、東京はだいたい全国平均くらいです。

このように出店する地域に、そもそも喫茶店文化が広がっていないと、おしゃれなカフェを出店しても集客に苦労するかもしれません。もちろん、新たな開拓の余地がある、という考えもあります。

外食好きなのは、どこの街?

次に、消費者がどのくらい外食を好むのか、という点についても都道府県別に比較してみましょう。2022年の家計調査に基づき、1世帯当たりの外食費が多い都道府県別の主要都市毎に並べ替えて比較してみました。

(出所) 家計調査(2022年)

1世帯あたりの外食費が最も多いのは名古屋市です。この他、近畿地方では神戸市、大津市、奈良市の外食費が多いようです(一方で堺市は、かなり下位にランクインしています)。このあたりの地域では、喫茶文化を支える外食の習慣が強いことが分かります。

首都圏の大都市である東京都区部・千葉市・横浜市も外食費は多いですが、人口あたりの喫茶店は多くはなかったことから、喫茶よりも食事にお金をかける文化だと考えられます。

一方、外食費が少ない都道府県には九州の都市が多いことが分かります。世帯一人当たりの外食費で見れば、名古屋市の半分くらいです。しかし、消費支出にそこまでの差はないことから、九州では外食よりも自宅や仲間内での飲食が多い文化なのでは、とも考えられます。

こだわりのカフェはどこにある?

それでは、こだわりのカフェを好む地域はどこになるのでしょうか?

ここで、都道府県内にある喫茶店のうち、個人経営の店が多い地域と、企業経営のチェーン店が多い地域を比較してみます。

(出所) 総務省統計局 喫茶店のいま(2022年)

喫茶文化が盛んな近畿の都道府県や高知県では、個人経営のカフェの比率が多くなっています。このあたりでは、こだわりのカフェを愛する文化がより広範に存在しているように見えます。

これに対し、首都圏の都道府県では法人経営のカフェの構成比が高くなっています。実用重視でチェーン店のカフェを好む文化がより一般的な地域といえるのではないでしょうか。

喫茶店文化が盛んな愛知県には、同時に独自の進化を遂げたカフェ・チェーン店もあり、全国平均くらいとなっています。

こだわりのカフェを好む客とは?

おしゃれなカフェを安定して経営したいとおもったら、こだわりのカフェを好むお客さまをつかまえなければなりません。

それでは、カフェのお客さまはどのようなところを見て、自分の行く店を決めるのでしょうか。

ここでは、日本能率協会総合研究所が、2021年に実施したアンケートのデータをもとに検討してみましょう。

まず、始めてお店に来るお客さまが最も気にするポイントを見てみます。
















(出所)“消費者動向②:喫茶店営業編”、日本能率協会総合研究所


最も気にされるのは、飲食店だけに「メニュー一覧」と「料金」の16%以上となっています。

次に気にされるのは、店構えに関係ありそうな「店内の様子」と「立地(周辺の雰囲気)」の8~9%となっています。

ですから、一見のお客さまに利用していただくには、おしゃれなカフェの立地や店構えはとても影響力があることが分かります。

ところが、お気に入りの店として何度も訪問してくれるお客さまの関心は、少し違うようです。

















(出所)“消費者動向②:喫茶店営業編

行きつけの店にする理由の一番は「行きやすい場所にあるから」であって、雰囲気のいい立地ではありません。

食事に関係した「味・品質の良さ」、「手ごろな価格」、「お気に入りのメニュー」はいずれも10%以上ですが、店構えに関連した「店内のレイアウトや座席が良いから」は5.8%と8番目くらいの関心事に後退しています。

つまり、料理や味、値段にこだわったカフェには、何度も来店してくれるファンとなるお客様がつきやすい。しかし、せっかく雰囲気や店構えにこだわって高いお店を作っても、インスタで一度写真を取ったらすぐに別の店に行ってしまうお客さまが集まりやすく、逆に経営が安定しない可能性が出てきます。

不動産や改装費などは出店費用の中でも特に高額です。

店構えにこだわったおしゃれなカフェよりも、利便性がありながら清潔で美味しいメニューにこだわりをもつお店を目指す方が、ずっとファンになって何度も通ってくれるお客さまを集めやすそうです。

こだわりのカフェで成功するには?

コロナ後は、廃業も相次いており、おしゃれなカフェを新規出店して成功する夢をかなえるには大変な時代になっています。こうした中で、日本のカフェは長いこと経営を続けていて既に独自のファンを持っている個人経営店と、大規模なチェーン店が出店する法人経営店の2つが多くなってきています。

新しく歴史が短いカフェが成功するには、出店の地域・場所とメニューへのこだわりが重要そうです。出店するなら、愛知県か近畿(大阪を除く)がよさそうです。

愛知県は独自のカフェ文化があり、特に単価が安く朝から多忙なモーニング・サービスに対応する必要があります。しかし、こうした努力を重ねて受け入れられれば固定ファンがつきそうです。

近畿(除く大阪)は、飲食のメニューの内容が値段見合いで質が高く、中心部から離れていてもいいので駅からの距離や駐車場が用意できれば、東北や九州などの他地域よりは、カフェの夢をかなえられそうです。

ただし、大阪は他の近畿の都府県に比べ外食費が低く値段にうるさそうなので、こだわりのメニューよりコスパの良さを目指した方がよさそうです。おしゃれやこだわりのカフェの夢とは、少しずれてしまうかもしれませんね。
首都圏は、チェーン店が強いので、雇われ店主を目指した方が近道のようです。

他の地域でおしゃれなカフェを出したいのであれば、まずお金持ちになってお店が儲からなくても食べていけることを目指した方がいいかもしれませんね。(冗談ですよ)。

カフェの夢をかなえてくださいね。


上田祐介

上田祐介

5バリューアセット株式会社 副社長兼インベストメント・ストラテジスト。1991年より大和総研でキャリアを開始。2001年より複数の欧州系・米系大手投資銀行でクレジット関連業務を担当。2010年よりメリルリンチ日本証券の、2017年からは三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ・クレジットストラテジストとして国内外のクレジット市場の調査チームを統括。日経ヴェリタス等の外部顧客評価で実績を上げる。

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