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生命力を高める日常の実践(3)

生命力を高める日常の実践(3)

5バリューアット株式会社は、日本のIFA(金融商品仲介事業者)を変えたいとの理想の下に、代表斉藤彰一が立ち上げた企業です。

当社ではお客様と社会に役立つ存在を目指し、経営哲学・理念の共有や、精神性の修養に努めるべく、外部講師をお招きしての社内勉強会を定期的に催しております。

以下では、当社が開催した社内勉強会についてご紹介させて頂きます。

2025年5月23日に第8回オフサイトセミナーを実施しました。今回は3名の講師の方に登壇いただき、個々の専門に絡めながら「生命力を高める実践」という演題でお話をいただきました。

本記事では3人目、料理人ちこさんのお話を掲載してあります。講師紹介などについては第1回の記事、羽賀ヒカルさん、こがみのりさんのお話については前回記事をご参照ください。

「食の力」(ちこさん)

映画『美味しいごはん』の冒頭でも触れられているように、高校時代のちこさんはごはんを炭水化物=太る原因として忌避されていました。学校やプライベートの問題でメンタルを病んだ際に大学受験塾で北極老人と出会い、塾で振る舞われた何も入っていないただの白むすびをおいしいと思え、おむすび目当てにそこから食に関心を持って人生が激変したことで、現在のちこさんが存在しています。

ちこさんにお話いただいた内容は食事によって人生が変わった実際の例や、食を考えるための観点など、非常に身近でなおかつ「あたり前」と思ってしまうがゆえに、意識向けることも大事に思ったり感謝することのない部分を、改めて捉え直してみるというようなレクチャーです。

食べ方を変えることで生じる変化

食事によって人生が変わった例としてまず最初にあげられるのが「50年生きて初めて食事というものをした」と述べる男性です。男性は51歳の誕生日に御食事ゆにわでディナーを(無表情で)食べており、ちこさんが感想を聞くと「今日誕生日で、51歳になるのですが、初めて食事をしたと実感しました」、「食事は、ルーティンでするものではなく、その時々に生まれ変わっていくものと感じ、とても新しい気持ちになれた」という返答があったそうです。

「生まれ変わる」「新しい気持ちになる」といった例では、そのほかにも「これまで食べられなかったものが、食べられるようになった」という話が紹介されました。食べ物の好き嫌いは特定のシチュエーションや記憶と結びつくことが多く、嫌々食べた経験や心地よくなかった記憶などに由来することが多いと、ちこさんは分析されます。

好き嫌いを克服できたケースとしては、トマトが苦手という若い人に「このトマトは嫌々食べたトマトではなく、違う人が作った別物で、違うシチュエーションだから」と試す」ように勧め、食べ直してみたトマトが不快ではなく「おいしい」と感じることで、特定の食べ物に対する記憶に基づいた嫌悪感を払拭して新しい気持ちになるという話や、母親から絶対にごはんを食べないと聞かされていた子供が、御食事ゆにわのコース料理のサービスとして出した白むすびを食べて「美味しい!」と感嘆の声を上げ、その後に出てきた土鍋ごはんも食べて周囲の大人を驚かせたという話などが紹介されました。

その他には、先の人生を考えた際にあと何回食事ができるのか・どんなものを食べたらいいのか悩んでいた方が御食事ゆにわで食事をして「この先何を食べていいかがわかった」といった声や、「ゆにわで出されたような料理を食べていきたいなと思った」などの感想がちこさんに寄せられたそうです。

御食事ゆにわでは、奇をてらったようなものや、特別な調理法などはなく、どこにでもあるような料理を美味しく出したいというところに重点を置いているので、ゆにわで食事をすると食について考えるためのヒントを持って帰る方が非常に多くあるそうです。

また別の例としては、こがさんのお話にあったお茶のケースに近しいもので。部下との折り合いの悪いお医者さんが、部下の「職場で温かいごはんを食べたいですね」という話に契機を見出し、お医者さんは御食事ゆにわにも来店経験があるのでゆにわのように土鍋でご飯を炊いて部下と一緒に昼ごはんを食べる機会を持つことで、色々な話をできるようになったそうです。

その他にも自分の人生について考える際、「食べる」という当たり前のことが大事だと思うようになると人生が実り豊かになった(何が実りかは人それぞれ)という声も多く寄せられたそうです。

食べることを失うと、人は活力を失ってしまう。人は当たり前にあることには感謝せず、失ったり、当たり前のことができなくなったときにそれらを大切さに気付くことが多いため、当たり前のことを大切に思うことが人生を豊かにするとちこさんは述べられます

食の力

食によって人生観が大きく変わるという話は、体験してみないとわからない主観的なものであるため、ちこさんは栄養士の観点からごはんを例に食を図式化し、「炭水化物」「温かいごはん」「ひかりのごはん」の三段階に、生命力の高低で分類されます。

栄養接収だけを目的としたごはん(体の栄養)はカロリーの数値としても換算することができ、突き詰めていけば炭水化物です。病院での食事を美味しいと思った経験があるひとは稀だと思いますが、病院の食事は数値を基にして作られており、作って美味しいよりも数字に収まっているか否かが重要であるため、味や「美味しい」という要素は念頭に置かれていないため、「美味しい」と感じにくいそうです。

生命力を一段あげたものは「温かいごはん」で、「温かい」は物理的なものではなく、誰かのためを思って作られたものや愛情や思いのこめられた状態を指し、温かさは心の栄養にもなり、作る側と食べる側の関係が近い食事などが、「温かいごはん」の代表例です。また、気持ちや思いを込めて「温かい」状態にすることは、ごはんを作ることの限らず誰かの為に何かをする(弊社のビジネスでいえば運用提案やアドバイス)際にも重要なものといえます。

さらに高い生命力を宿したもの、食べた人が感動で泣き出すようなものが「ひかりのごはん」と呼ばれ、ちこさんは魂の栄養になるようなものと「ひかりのごはん」について述べられます。




現実的・物質的なごはんは客観的に数値化できる一方で生命力は低いとされますが、物質的なごはんを否定しするのではなく、炭水化物としてのごはんも、生命力が高いごはんも、全てをまとめて「生命力を高める食事」と捉えられ、「温かいごはん」「ひかりのごはん」と生命力が高いものになるに連れ、意志や思いといった、目に見えない要素の重要度が高まっていきます。また、「ひかり」について、書籍版『美味しいごはん』の中では次のように記されています。

「“ひかり”の受け渡しこそ、食事の本当の意味なのだよ」

 北極老人は、そのように教えてくださいました。

“ひかり”それは、“愛”と言ってもいいし、“プラーナ”と呼んでもいいし、“ご縁の糸”“いのち”と思っていただいても構いません。
 すべての幸福の源泉となるエネルギーとでも言いましょうか。

『美味しいごはん』



遠くない将来、いずれ私たちのごはんもAIが作るようになり、食事もカプセル化されたもの(適切な数値計算に基づく栄養接摂取)となり、配膳も自動音声の機械が行うようになたったとしたら、人が作って人が配膳してくれるごはんのほうが「温かく、美味しく感じた」と思い出すことがあるかもしれず、わかりやすく・コンパクトにすることで失われてしまうものも多くあると、ちこさんは述べられます。

金融業界においても、AIを用いたロボアドバイザー(ロボアド)による運用提案が、人力より合理的・効率的かつ進歩的だと見なされる傾向がありますが、その提案はちこさんのいう「温かさ」や「ひかり」を含有するものではなく、省力化することで失われてしまうもの多くあると思われ、ロボアド的な運用が適していると感じる人も多くいると思いますが、そこに物足りなさを感じ、人力による提案を懐かしく感じる人も今後出てくるかもしれません。

食について考える際、命をつくっているのは「食べ物」ということに立ち返ることが重要で、それはつまり命のあるものを食べることで、(自分の)命が作られていることを再確認することでもあります。

ちこさんは食べ物は性格・考え方・人間関係に影響すると指摘され、好き嫌いの多かったご自身の高校時代では、ダイエットの目的でごはんを避け、高カロリーのクリームや餡などを捨てることが多く、出来合いの食べ物が身の周りにあふれているので、誰が作ったものかというイメージが湧かなかったのも要因と述べられます。

後に気づいたのが、食べ物と同じく人間関係にも好き嫌いが多かったことで、それは勉強や仕事も同様だったそうです。食わず嫌いであったごはんを食べられるようになることで嫌いなものを好きになれる心地よさを知って以降は、嫌い・苦手な人や仕事もなくなっていき、「ごはんはこういうものだ」というような食べ物に起因した決めつけや偏見が解けたこと(食べるということや食べ方を少し変えてみる)で、人間関係や考え方にも直接的な提供を与えることがあるという、ちこさんが著作の中で発信しているメッセージに関連したお話もいただきました。

食べ方を変える、食を考える

これまでのお話の中で触れられたように、食は人生観や考え方に大きな影響を与えます。食べ方を変える実践的な取り組みとしてちこさんが提案するのが、「 食事の場を整える」「 命に感謝して食べる」「 人と仲よく楽しむ」というものです。

日々忙しく働いている中では先の3つを実践するのは難しい部分もありますが、今日が人生最後の日であればという意識を持ったり、「どう死んでいくか」を考えることが生命力を高めることに繋がっていくのではないかとい述べられます。

御食事ゆにわにはお医者さんや看護師の方の多く来店するそうで、病人の方が食べられない状態になったり臨終が近くなった際にやりたいことなどをたずねると、ほぼきまって「美味しいごはんが食べたい」と答えるそうで、「美味しいごはん」は具体的なものではなくその人の記憶にあるものだそうです。

食べることが「生命力」を維持したり高めたりするという例は、介護医療の現場で確認されることが多くあります。第7回のオフサイトセミナーに登壇頂いた森田洋之さん(医師・医療ジャーナリスト)は入院介護や過剰医療(特に胃ろう)の問題を取り上げており、セミナーの中では入院中は誤嚥性肺炎を防ぐため絶食状態の処置がとられ、栄養は経鼻経管で摂取していた高齢男性が在宅介護に切り替えた後に久しぶりに固形物(バナナ)を食べて「美味しい」と言ってガッツポーズを取る動画などが紹介され、食事や固形を食べるという行為が非常にダイレクトな形で活力・生命力に繋がっていると実感させられました。

さいごに、取り入れたい食べ物の素材などについてのお話をいただきました。まず、生命の源となる正のエネルギーを補給する水・米・塩(合わせるとごはんになる)、次に負のエネルギーを退け身体から余分なものをそぎ落とす味噌と梅干といった日本独自の発酵食品があげられ、食事の実践としては、「ながら食べをしない」、「良い『水・米・塩』、『味噌・梅干』を使う」、すべては物ではなく「ひかり」のかたまりとしてイメージするといった点が紹介されました。

締めの言葉で印象的だったのは、ちこさんは栄養士科の出身なので食べ物を数値として捉える習慣が身についている一方、あえて具象的な観点を外して“ひかり”(思いや愛情などとも言い換えられる要素)のかたまりという抽象的なイメ―ジで食べ物を捉えるという発想の転換で、数字という具象と“ひかり”という抽象で食べ物を捉えるという発想が非常に新鮮でした。

[参考記事]

医師から禁食と言われ続けて半年、自宅に帰ったらバナナを食べてガッツポーズの男性。」(森田洋之, 2023年11月17日)

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鈴木 真吾

鈴木 真吾

2023年3月よりインハウスクリエイターとして写真・映像撮影および編集、グラフィックデザイン、DTPなどを担当。専攻は文化社会学、表象文化論等。

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