紙の雑誌、最近読んでいますか?
だいぶ前(2023年10月)のことですが、久々に紙の雑誌……と括り切れない、いわば非電子の、物理的な雑誌を久々に購入しました。
購入した雑誌は、厚さ10cn、総重量3kg、表紙は刺繍(!)というモンスター仕様の『デザインの引き出し』50号。日本の特殊印刷の見本が付録として付帯する前代未聞の仕様ですが、厚さだけなら同誌に負けない、様々な付録つき雑誌が書店に多く並んでいることにも驚きました。
出版不況が叫ばれて久しいですが、各雑誌は電子書籍専門への移行、紙媒体との並走を継続、志半ばでの休刊、休刊を機にYouTubeやweb記事を中心にした新メディアの構築など、それぞれの生き残り戦略を模索しております。
紙の雑誌は特殊想装丁や豪華な付録といった、物理媒体ならではの戦略も展開されていますが、多くの雑誌の場合電子書籍およびサブスクリプションでの配信を並行して展開しているため、今回はサブスクプリプションサービスやデバイスなどの面から、電子書籍化された雑誌について考えてみたいと思います。
雑誌乱読の時代
筆者の関心・専門領域としては、カメラ、IT / ガジェット、編集・デザインなど、傾向がはっきりしているため、かつては購読していた雑誌の範囲も絞られていたのですが、ここ数年は、非常に広範囲に渡るジャンルの雑誌を購読しています。
休刊したものも含め、不定期に読んでいた雑誌を挙げてみると
〇カメラ関連
・『カメラマン』(モーターマガジン社、2020年4月休刊)
・『アサヒカメラ』(朝日新聞出版、2020年6月休刊)
・『日本カメラ』(日本カメラ社、2021年4月休刊)
・『フォトテクニック・デジタル』(玄光社、2021年7月休刊)
・『デジタルカメラ・マガジン』(インプレス)
・『CAPA』(ワン・パブリッシング)
〇IT/ガジェット関連
・『週刊アスキー』(KADOKAWA、2015年6月よりネット/デジタルに移行)
・『DOS/V POWER REPORT』(インプレス、2023年12月発売号で休刊)
・『MAC FAN』(マイナビ出版)
・『flick!』(枻出版社、2021年11月休刊)
〇編集・デザイン関連
・『+DESINGING』(マイナビ出版)
・『ビデオサロン』(玄光社)
・『アイデア』(誠文社)
などがあります。また購読形態についても、毎号購読、気になった号のみ購入、バックナンバーを図書館で借りる、サブスクリプションの利用(2019年にipadを購入して以降)と様々ですが、現在は『デザインのひきだし』のようなケースは稀として、ほぼ8-9割は電書とサブスクリプションを利用して、紙の雑誌を購入するという習慣は、すっかり減少してしまいました。
雑誌サブスクリプションの黎明期と現在
電子書籍・雑誌サブスクリプションの代表格ともいえるAmazonのKindle Unlimitedが日本国内サービスを開始したのは2016年8月のことで、雑誌に特化することで月額料金を抑えた楽天マガジンもKindle Unlimitedと同じく16年8月にローンチしています。
代表的な2のサービスに先行すること2年、NTTドコモは2014年6月に雑誌読み放題サービスdマガジンのサービスを開始し、通信キャリアの提供する電子書籍サブスクリプションの先陣を切り、続く2018年にKDDIが同社の電子書籍ストアで「読み放題プラン マガジンコース」を開始しました。
以降も続々と、総合的なものからジャンル特化型まで、様々な事業者が提供する電子書籍・雑誌のサブスクリプションが続々と登場し、現在では雑誌サブスクリプションに絞っても、主要サービスとして10ほどの名前が頻繁に紹介されます。
▽参考記事
auから雑誌読み放題プラン、「ブックパス」に月額380円のマガジンコース – ケータイ Watch (impress.co.jp)
雑誌読み放題サブスクおすすめ12選を徹底比較!ランキングで人気サービスを紹介【2024年】 | ビギナーズ (rere.jp)
その中からどのサービスを選ぶかは、雑誌を見る端末(スマートフォン、タブレット、パソコン)、読みたい雑誌が含まれているか、利用点数/バックナンバーをストックできるか
閲覧アプリの使いやすさ・安定性などが比較対象になると思います。
サービスの選び方
筆者の関心・使用端末などを例に、各サブスクリプションを検討してみましょう。
まず、筆者の使用端末や関心テーマは下記になります。
・スマートフォン: iPhone (契約キャリア: au / POVO)
・タブレット: ipad
・関心領域: カメラ/写真、デザイン、IT系などが主
・パソコン環境: Windows (在宅時) / Mac(外出時)
・電子書籍: kindle本をメインに購入(技術書、デザイン関連)
・図書館の利用: 定期圏内にある複数の区立図書館を利用
電子書籍/雑誌の閲覧は8割がipadを使用し、2割はパソコン(文章執筆時の資料として記事を参照する等)のため、スマートフォンではマンガも含め電子書籍を閲覧することは、ほとんどありません。
筆者はサブスクリプションサービスを利用する以前から既にkindleの電子書籍を利用していたので、Kobo(楽天)、honto(大日本印刷)、Kinoppy(紀伊国屋書店)といった電子書籍サービスは、ブラウザで読めるものもありますが専用のリーダーアプリの導入に煩わしさを感じており、電子書籍の購入・閲覧はほぼKindleに絞っています。とはいえ、電書サービス各社は独自のセールを展開することもあり、購入元やリーダーアプリの分散が気にならなければ、各社のお得なサービス/キャンペーンが展開された際にまとめ買いをするのも良いかもしれません。
割引サービスは主に購入型の電子書籍に適用されますが、一部サブスクリプションでは最初の一か月をお試し価格で登録できるサービスもあるので、無料体験を利用して各サービスの使い勝手、配信されているコンテンツが自分の関心に合致しているかの比較も有効です。
伝説の割引キャンペーン
サブスクリプションとは異なりますが、電子書籍セールとの関連で紹介しておきたい事例があります。同規模のキャンペーンはもう二度とないでしょうが、2021年3月にDMMブックス(2000年から電子書籍の販売を開始)が、新規登録者の初回購入に限り全商品70%引き(上限100冊)という、異例の割引キャンペーンを展開しました。
キャンペーン開始当初はさほど話題にならなかったものの、SNSやネットメディアで話題の購入希望者が殺到(著者への印税は通常価格で支払われるというアナウンスも、大幅割引率での購入で著者への申し訳なさを感じる読者の背中を押し、大量購入の後押しになったと思われます)。
反響の大きさに、当初は6月末までの予定であったキャンペーンは4月12日で終了。損失は60億にものぼり、ポーズ集や図録といった高額な実用書が販売ランキングに連なっていたことも、損失額を押し上げた原因と言われています。
DMMのキャンペーンでは、筆者も動画編集、モーションエフェクト、整音、写真撮影技法、デザイン関連の実用・参考書籍を多数購入させて頂き、それらを閲覧する際にDMMのリーダーアプリを使用しています。とはいえ、新規での購入はほぼkindleが中心であるため、DMMリーダーアプリの稼働率はあまり高くはありませんが、キャンペーンセールで購入した技術書類は今なお有効活用しています(技術書系は版型も大きくページ数の分厚いため、電子化による恩恵を強く感じます)。
▽参考記事
DMMブックス、初回100冊7割引きクーポンで損失60億円 オウンドメディアで明らかに – ITmedia NEWS
60億円の損害を出した「DMMブックス」70%OFFキャンペーン早期終了の裏側 – DMM inside
複数サービスの併用で充実した読書ライフを
サブスクリプションに話を戻しましょう。どのサービスの利用が自身に適しているかは、個々の関心やライフスタイルによっても変わってきます。
筆者の場合は、既にkindle本を頻繁に購入しているため、Kinddle Unlimted(以下KU)が第一候補に上がります。KUの利点は雑誌だけでなく、アンリミテッド対象に指定された書籍も読み放題対象に入っているという点で、コロナ禍で在宅ワークが増えた頃は自炊の頻度も増大し、読み放題対象のレシピブックを大いに活用していました。
一方KUのデメリットは、読み放題としてレンタルできる冊数に上限があるという点です。以前は10冊が上限でしたが、2021年12月頃からは上限が20冊に拡張されました。とはいえ、書籍と雑誌を合わせて読んでいると簡単に上限に達してしまうほか、雑誌のバックナンバーをストックして読み返すことができません。そのため、筆者はKUと合わせて楽天マガジンを利用しています。
KUが月額980円で、楽天マガジンは月額418円。合わせて1,398円/月のコストになりますが、雑誌を数冊読む程度で元は取れるので、毎月購読したい雑誌が複数冊あるという方は十分に元が取れると思います。
楽天マガジンは閲覧数に制限はないため、端末の容量が許す限りバックナンバーをダウンロードして持ち歩くことができるのが強みです。その他、ある程度の雑誌はKUと楽天ブックスで共通ですが、一部KUにしかない雑誌(『DOS/V POWER REPORT』や『ビデオサロン』など)もあるので、複数サービスを併用することで充実した読書ライフが送れます。
電書雑誌の購読は快適であれど……
サブスクリプションのおかげで、幅広いジャンルの雑誌にアクセスできるようになり、女性誌など日常で手に取る機会が少ない雑誌を読む機会が広がりました。雑誌に関しては電子版への抵抗感などは殆どなくなりましたが、やはり単行本や学術書は紙媒体でなければという部分もあります(クセのようなものですが)。
タブレット端末の大きな画面は雑誌を表示するには非常に適しているのですが、こと文章がメインで縦書きの形式に関しては、単行本のスタンダードであるA5版や、菊版、新書の版面に慣れすぎており、iPadでの読書時に、版型の認識やページめくりなどの身体的違和を感じることもしばしばあります。
しかし横書きであれば、タブレットでの表示とも親和性が高く、図版やデザイン要素の多い雑誌の体裁であれば、(縦向きの片ページずつ表示であれば)特に違和感なく読み進められますが、身体感覚に関わる部分は人によって大きな個人差があると思いますので、どの端末での閲覧や、縦横のどちらの表示の向きが快適かなどは一概にはいえませんが、サブスクリプションを利用した雑誌の購読は、最新号のチェック~ダウンロードを習慣付けられれば幅広い情報の接種に繋がります。
自身が読みたい雑誌を絞り込むまでが少し敷居を高く感じてしまうかもしれませんが、どんな雑誌があるのかをサーベイするだけでも興味関心を広げる機会になると思うので、ひと月でも試してみることをおすすめします。
▽参考記事
報道発表資料 : 電子雑誌の定額読み放題サービス「dマガジン」を提供開始 | お知らせ | NTTドコモ (docomo.ne.jp)
サブスクとコンテンツメーカー~NTTドコモ・dマガジン デジタルメディアの現在地(3):東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
Kindle Unlimited上陸について思うこと « マガジン航[kɔː] (magazine-k.jp)
電子雑誌のサブスク正念場 – 日本経済新聞 (nikkei.com)
日本最大級の法律書籍・雑誌が閲覧できるサブスクリプションサービス「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」の導入企業が1,000社突破|法人携帯とテレワークの MWPオンライン by コネクシオ (mobileworkplace.jp)