5バリューアット株式会社は、日本のIFA(金融商品仲介事業者)を変えたいとの理想の下に、代表斉藤彰一が立ち上げた企業です。
当社ではお客さまと社会に役立つ存在を目指し、経営哲学・理念の共有や、精神性の修養に努めるべく、外部講師をお招きしての社内勉強会を定期的に催しております。
以下では、当社が開催した社内勉強会についてご紹介させて頂きます。
2026年5月22日、第11回オフサイト研修を開催しました。今回は福井県越前市 環境農林部 農政課課長の高橋良孝さんにお越しいただき、「日本の農業と越前市の農業について」という演題でお話をいただきました。
前半部では越前市の紹介、日本の農業を取り巻く状況や越前市における農業の特色や取り組みなどを中心にまとめており、後半部の記事では日本の農業を維持するための方策や、農業と経済に関連した質問が活発に行われた質疑応答の一部について取り上げます。
この先、日本の農業は続けていけるのか?
越前市の例では、米、麦、そば、大豆などが水田で作られる代表的な作物で、コスト面から農産物をみると、田んぼ10アール/1反(約300坪)から収穫できる量は1俵60kg換算で、8.7俵(約520kg)の売り上げが約28万円、経費分を引くと約15万の概算になるとされます。
令和7年のケースでは13万6千円の所得が発生しており、補助金が不要に見えますが、米価高騰の影響による数値かつ物価高により経費も上昇しているため、良好な結果と言い難い部分もあるほか、米価高騰前である令和5年では収入がマイナスとなったため補助金の補填が必要されたというデータが紹介されました。
作付け面積や生産規模の差異はありますが、他の農作物と比べると水稲 は収入を保ちやすい特徴があります。一方、大麦の場合は1俵を50kg換算で、1000平米で250kgの生産が可能ですが、売り上げは1万5千円に留まります。経費を引くと赤字になりますが、そこに補助金が加わることで所得が発生し、補助金がない場合は4万2千円のマイナスが発生するそうです。
ソバは1俵を45kgで換算し、1000平米で1俵取れるか取れないかの生産量となります。売り上げは1万2千円程度、補助金が3万6千円入ることで、総計は1万8千円の所得になり、大豆は1000平米で120kg、補助金がある状態でも1万3千円の赤字、補助金なしでは6万円の赤字となり、栽培は補助金頼りになってしまい、個人・小規模農家の経営実態は非常に厳しいそうです。
100ヘクタール以上の農地を有する法人・大規模農家は、国や県の補助金が優遇される一方、小規模農家に対する補助制度は消えていくため、小規模・個人の農家は将来的に厳しくなると高橋さんは述べられます。
国が大規模農家に集積させていくという方針を取るのに対し、越前市としては小規模農家の支援を継続したいという方針を持っているので、有機栽培などで協働的な取り組みを行い、令和5年より有機農業を推進するための3本柱が提案されたそうです。
有機農業推進のための3本柱は、約100ヘクタールで有機栽培を行う農事組合法人(現在は株式会社)ファーム広瀬の栽培技術を水平展開する「規模感のある有機農業の推進」、カメラやドローン、水管理用スマート機器などを用いる「有機農業へのスマート技術の導入」という生産に関わる2つの柱と、サスティナブルツーリズムなど富裕層・海外向けに訴求力の高い情報発信や市場調査・試験販売による販路開拓(加工品のブランディング化)など、加工・流通・消費に関わる「有機農産物の更なる高付加価値化」で、慣例栽培に比べて高コストな有機農産物の単価やプレミアムを高め、補助金が今後減少していく小規模農家の支援に繋げるための取り組みです。

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(画像出典: 株式会社クボタ)
農業を次世代に引き継ぐために、越前市では「買って食べて、地産地消で応援!」という スローガンを掲げているほか、日本の自給率を高めるためにできることとして、国産の農産物を意識して買うことで、越前市をはじめとした日本の農業を応援でき、強いては日本の農業を支えていくことに繋がると、まとめていただきました。
都心部に住んでいると、農産物直売所を目にする機会は少なく、スーパーの地場野菜コーナーで農産物を購入することが地産地消の機会となりますが、現在ではふるさと納税のほか、旬の食材を全国の生産者から直接購入できる「ポケットマルシェ」のような直販サービスなどもあり、そういった形で生産者を応援することができます。
農業や食料の問題は身近なものでありますが、日常風景の中に田畑の少ない都市部で生活していると気にかけることは稀かと思います。コロナ禍や戦争といった外的要因で輸入や流通の停滞や物価の高騰が発生したり、「令和のコメ騒動」のようにマスメディアで大きく報道されるような騒ぎがおきなければ、それらについての問題を意識することも少なく、日本の食糧自給率の低さや、資源だけでなく食糧や飼料も輸入に依存している点も見落としがちになってしまいます。
近年では持続可能性(サスティナビリティ)への関心が高まっており、高橋さんのお話での持続可能性(地域、農業、環境)も重要なキーワードとして登場しました。特に高齢化や担い手不足が懸案事項となる農業では、個人・小規模農家は補助金なしでは経営が厳しいという状況や、スマート化や農作物への高付加価値化の付与などについても触れられました。
参考記事: 「無人なのにまっすぐ植え付け…農業高校で『ロボット田植え機』の実習公開 担い手不足解消に期待(鳥取)」(2026年6月4日, さんいん中央テレビ / Yahooニュース)
質疑応答
最後に、質疑応答の一部をご紹介します。質疑では、高橋さんに加えて越前市 環境農林部 農政課 副課長の谷口さんからもお話をいただきました。

ビジネスとしての農家や収益性に関わる部分は現場の方に直接お話を聞ける貴重な機会でもあるので、質疑応答でも経済関連の質問が活発に行われました。端的にいえば日本の農業を今後も安定的に持続させるには、ビジネスとしての則面を意識する必要があり、消費者ができることはやはり、有機栽培のような付加価値のある農産物・加工品に目を向け、「買って食べて、応援」を実践することになると感じました。
Q: 日本の農業を解決策として「儲かる農業」が考えられますが、どのような作物が高利益率ですか?
A(谷口さん): 正確な答えではないかもしれませんが、みなさんに買って食べていただけるほか、国産品を選んでもらえるという点で、やはり水稲(コメ)が高い利益率を持っています。
どうすれば儲かるかという点では、IT・スマート技術などの導入があげられます。例えば北海道のような広大な農地では無人のトラクターを運用しています。越前市でも新技術を取り入れていたものの、なかなか実を結ばないほかコストの負担が大きく、農産物に付加価値を付けたり、手間のかかる作業を無人化に切り替えることがコスト収支の改善に繋がっていくと思います。
越前市の田んぼは全国から見ると小規模の田んぼで、生産量を広げるためにはコストのかかる土地改良の負担が必要になります。とはいえ農家の費用負担が大きいため、国が補助すれば国外に向けた生産も可能になりますが、越前市では土地改良用の補助の確保が難しいため、有機農業や付加価値を高める農業を推進しています。
Q: 現在の農業は補助金がないと成り立ちませんが、昔は補助金なしでもやっていけたのでしょうか? また、補助金が導入されるに至った経緯や全体像をお聞きしたいです。
A(谷口さん): 以前はたくさんの農家さんがいましたが、今は減少しており、国としても農業は儲からないものと認識していました。定年退職後に農業を始める方も多く、農業の所得は年金にプラスする副次的なものと考えられたほか、家族と一緒に農業をするので人件費は抑えられるというケースも多く、そういった背景が儲からなくても農業を続ける理由にあります。
国の施策としては平成24年に「人・農地プラン」(地域農業を担う中心的な個人・法人の農業者を決め、担い手に農地を集約・集積する計画。令和5年に「地域計画」へと変更)を出し、農業の担い手を集積する方針を打ち出しました。
面積の少ない越前市では1a(アール)あたり1万7千円、大規模なところでは7~9千円ほどの補助がでるので、大規模な農地を持つ法企業・大規模農家は儲かるようになりました。
今クローズアップされているのは、個人の小さい農家で、先祖から引き継いだ田んぼを守るため年金や退職金を農業機器に投資される方もいます。いわば土地を守るために残っている人が農業を支えています。
そもそも農業が儲かる仕組みが構築されていないので、農産物に適正価格を求めてもいいのかもしれません。付け加えると、補助金によって農家の経営が支えられることで、私たちは国産の農産物を食べることができます。
現在では、生産だけではなく販売まで自分で行うような農家さんもいますが、経営感覚・生産感覚の両方を持つ農家さんは僅かに留まります。
Q : 人力作業が中心だった昔の農家は儲かっていたのでしょうか?
A(谷口さん): 兼業農家を営む父親の世代だと、1町歩(約1ヘクタール)の田んぼを作ることでサラリーマンの収入程度稼げるといわれていたそうです。現在では米価が高騰すればかろうじて補助金なしの収入にはなるという程度ですが、昔はしっかりとした収入になっていたと思います。
Q: サスティナブルツーリズムやインバウンド人気の関連で海外需要が高まっていますが、どのように活用できると考えられますか?
A(高橋さん): JAたけふ経由で米を輸出するなど、海外への展開も一時期行っていました。小規模なものですが、その分小回りが利くので独自路線でも成果を上げられました。
インバウンドの関連では、越前市の伝統工芸品に対してインバウンド市場の関心が高く、和紙や打刃物などが海外から高評価を獲得しています。そこからもう一歩踏み込んで、「コウノトリの舞う里づくり」を掲げる越前市の田園風景や自然に触れてもらい、関心を高めてもらいたいと考えています。
現在はBTV(Best Tourism Village)の認定に向けた取り組みを行っており、認定が取れれば世界への発信も強化されるかと思います。BTVにはニセコや白馬も認定されていますが、そちらではオーバーツーリズムが問題化しています。一方、福井県内では今のところコンテンツが少ない関係でニセコや白馬のような問題には発展しないと思いますが、少しでも海外の方に認識してもらえるようなコンテンツを取りまとめています。
Q: 「コウノトリ米」の生産は採算ベースに乗っていますか?
A(高橋さん): 5.5俵で採算がとれるという具合で、販路開拓等は豊岡市の「コウノトリ育むお米」などもお手本にしています。ふるさと納税など購入することはまだできないため、今後JAと相談しながら展開できればと思っています。
A( 谷口さん): 農家の方は作物を生産する感覚に長けていますが、経営感覚は不得手な方が多いです。JAは買い取った生産物を大量に捌くという点で経営感覚はありますが、商品を高く売るという部分が苦手な傾向がありあます。農家さんとJAの不得手な部分が、農産物の値段変動が少ないという日本の農業の構造に反映されていますが、消費者としては変動の少ないことがありがたい点でもあります。
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