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米ドル建て債券市場動向 2024年9月-第2週
2024年8月30日から9月6日までの週次の米国債券市場動向を確認し、起債市場、流通市場の取引金額、流通市場の価格変化について報告する。
(1)起債市場の傾向
- 5日の木曜日前後には、歴史的にみても巨額の起債案件が集中した。通常であれば、大型起債は需給面からスプレッドの拡大要因になりやすいが、今回は逆にタイト化に影響した。FRBの利下げ期待が高まってはいるものの、発行体は今の金利・スプレッド水準で起債した方が有利だと考えた結果を反映。つまり起債市場は、既に市場レートが利下げ後を織り込んだ水準に近いとみなしている、と考えらえる。
- 起債額の特に大きかった案件は、9月5日に発行した消費者金融セクターの「マスターカード」の30億ドルの起債。債券の本数は3本、年限は3~10年、優先債調達。
- 2番目は、9月3日に発行した廃棄物・環境サービス・機器セクターの「ベラルト」の21億ドルの起債。債券の本数は3本、年限は2~9年、優先債調達。
- 3番目は、9月5日に発行した自動車セクターの「アメリカンホンダファイナンス」の18.5億ドルの起債。債券の本数は3本、年限は2~5年、優先債調達。
(2)流通市場における取引金額
- 2024年8月31から9月6日までに取引額が多かった社債を、金融機関債と、事業会社(投資適格、投機級)に分け、それぞれ示した。
- 最も債券の取引額が多かった金融機関債は、新発債の起債に伴う入れ替えニーズがあった「バンクオブアメリカ」で、「モルガンスタンレー」、「シティグループ」等の債券が続いた。
- 米国G-SIBs以外で取引の多かったのは、HSBC債、UBS債であった。
- 投資適格の事業会社社債では、「ウーバー・テクノロジーズ」が最も多く取引され、「インテル」、「メタプラットフォームズ」がそれに続く形に。投資適格債でより積極的に取引されたウーバーは、8月に公表されたFY2024Q2決算が好調、さらに22日にはCruise社と自動運転車導入に向けた戦略的パートナーシップを発表、これらが好感された。
- 投機級債では、フロンティアコミュニケーションズ、CSCホールディングスが取引対象に。特にCSC債は取引が急増(通常の2倍以上を継続)、乱高下していた。
(3).流通市場における価格動向
- ここでは、前週の利回り・スプレッドの時系列推移、セグメント別に比較した個別社債相場の動向を確認する。
- 米国市場の社債利回りは、国債利回りの低下に合わせ全般に低下したが、一方でスプレッドは全般に拡大。米国債に比べ米ドル建て社債の利回りが維持されていることを示している。
- 米国籍事業法人の投資適格債で、最も上昇したのはヘルスケア施設・サービスセクターのサターヘルス。大統領選で個人医療費の価格抑制が話題となり利用増大期待から上昇。次いでカリフォルニア州で電力・ガスを独占的に供給するPG&Eが続く形。電力会社のPG&Eは定期発行体でスプレッドが維持されやすく、国債連動で債券価格が上昇。
- 投機級債で最も上昇したのはケーブルテレビ・衛星放送セクターのディッシュDBS。新たな動きでは娯楽コンテンツのパラマウント債が上昇。- 投資適格債で、最も下落したのはパイプラインセクターのEQMミッドストリーム・パートナーズ。エネルギー相場の下落を受け、パイプラインのEQM、ターガ・リソーシズや探査・生産のデボン・エナジー等のエネルギー企業債が下落。
(4) まとめ
- 先週は、株価が下落し米国国債の長期金利に加え2年までの短期金利も引き続き低下。イールドカーブのスティープ化(急角度化)も進む。国債・社債共に居所を探る展開が継続。
- 当面、ドル円レートは140円台のボックス圏、米10年国債利回りは3%台後半で推移すると想定。